60人目 香川浩樹さん:株式会社ヴィーノ

会社名:株式会社ヴィーノ
URL:http://www.club-vino.com/
公開日:2010年10月23日


今回の旅は、株式会社ヴィーノ 香川浩樹さんです!

まずはお仕事の内容を教えてください。

株式会社ヴィーノといいまして、結婚相談会社です。
ヴィーノの会員さんにお相手を紹介して、
結婚までのお手伝いをするのが仕事です。

今まさにブームがきている業界ですね。

そうですね。
結婚相談所は資格や許可が一切いらないんです。
誰でも開くことができるからこそ、激戦。
関西だけでも500~600社あるんですが、
会社ができては潰れての繰り返しで
黒字運営をしている結婚相談所は全体の1割くらい。

御社は関西でNo.1だとお聞きしました。

成婚率(結婚する確率)ではトップクラスです。
20~30代の恋人のいない独身男女が
1年以内に結婚できる可能性を国が発表しているんですが、
浅井さん、何%くらいだと思います?

10%を切るくらいですか?

2~5%なんです。

そんなに低いんですか?

自分でがんばって「婚活」をしている人で4~10%。
この数字からもわかる通り、
今は普通にしていても結婚ができない時代なんです。
何が足りないのかというと、対人コミュニケーションですね。
メールや電話でコミュニケーションが取れていても、
「この人と一生一緒にいよう」と思うには
会わないことには始まらないわけです。

携帯電話やインターネットが普及したことで
対人コミュニケーションが減ってしまった、ということですか?

そう。出会いは昔より圧倒的に多い。
でも結婚する率は減っている。
なぜなら、「自分を磨く」ためのコミュニケーション力が足りないんです。
昔の日本では「この人と結婚したい」と思わせる
雰囲気や仕草を親から学んで受け継いでいました。
でも、今はそういったことを教える場がないんですよ。
僕はこの仕事を始めようとした時に、
出会いの場だけじゃなく「自分磨き」がセットにならないと
絵に描いた餅やと思いましたね。
たとえば、行政が行っている50対50のお見合いパーティ。
マッチングは何組出ると思う?

1組くらいは出るんじゃないですかね。

答えはゼロ。50対50でもゼロですよ。
みんな結婚したいから集まって来ているのにマッチングせえへん!
自分のことを伝える技術や、
相手のいい面をきちんと見るための
コミュニケーション力が足りてないんです。
これがなかったら意味がない。

いつ頃から今の仕事を始められたんですか?

3年前ですね。
こんな風にやっている結婚相談所はないから、
「香川さん、そんなことすると面倒くさいだけやで!」
って最初言われました。
自分のことをええように言うつもりはないけど、
この仕事ってエネルギー産業なんです。
世の中、金や物があっても
人が笑わんかったら何も始まらへん。
その「人」が今減ってんねん。
何とかせなあかんわけですよ。

若者の自殺者が多いとも言われていますね。

20~30代の自殺者が一番多くて、
ニートも多いと言われてる。
人間には、生存本能と種族の保存の本能、
そして人に貢献したい本能、という3つの本能がある。
「誰かのために何かしたい」っていう本能がちゃんと動けば、
「お母さんのためにがんばろう!」
とニートも動くわけです。
家族のためにがんばろうという人はニートなんてしていられない。
自殺を考えていた20~30代の人が、
「家族ってええな。自分も家庭を持ちたいな」
と思ったらどうなります?
自殺を止めてがんばりますよね。
家族はすごく大事なの。
家族をつくること、それが結婚やねん。
産業や経済を盛り上げる前に「人」なんです。
自殺だけ止めてもしゃあないねん。
止めたところでニートになったらダメやんか。
だから、家族がいるねん。
家族をつくるのが僕らの仕事。
それなのに、僕らの仕事は「出会い系」と誤解されているところがある。
業界のそんな現状を見た時に、このままではいかんと思った。
それで今の結婚相談所を始めたんです。

以前から結婚関係の仕事をしていたわけではないんですね。

元々はサラリーマンで、営業をしていました。
将来は社長になりたいと思っていたから、
営業を辞めた後、叔父の会社に移ったんです。
次期社長としてね。
叔父の会社でも売上を伸ばして順調だったんだけど
「30歳で会社をつくりたい」
っていう気持ちがあった。
それが29歳の頃。
年収もそこそこあったけど、その時は
漠然と億万長者になりたいと思ってたの。
どうやったら億万長者になれるんやろう?
今のままではムリよな。
どうやったら億に変わるんやろう?
って考えてた。

それでこの仕事を始められたんですか?

いや、その前に、30歳になった頃かな、
知り合いの人が、
「香川ちゃん、億万長者のなり方を教えたるわ!」
って、僕のところに飛び込んできて。
「ほんまですか!」
って、僕も乗っかっちゃってね。
その人を信じて、身も心もお金も、
本当に何もかもすべて投資してしまったんです。

かなりのめり込んでしまったんですか?

周りからは「宗教に入った」と言われたね。
「香川ちゃん、投資したら投資するだけ返ってくる。振り子の法則や」
って、その人に言われて。
普通の状態だったらそんな話は信じないでしょうね。
周りの人もみんな反対してました。
「香川ちゃん、騙されてるで」って。
でも、当時の僕はその人をまるで教祖のように崇めてしまっているから
周りの声が届かないんです。
「これから香川ちゃんが商売するから。
彼は信用できるから出資してやってくれ」
と、ある時その人が出資の話をして、
僕の口座にものすごいお金が集まってきた。
まぁ、全部その人のところに流れていくんですけどね。
僕は普通の家庭で育っていて、
裕福な家じゃなかったから1~2万でも大金という感覚。
それが何十万という単位になると、もう別世界ですよ。
そんな大きな金額を集めて始めたのに、
結局、事業は失敗してお金は全部なくなり、
その人はどこかに消えちゃって。
食べるものもないけど、社員を雇ってるから
給料だけはなんとかして払わないといけない。
それだけは一度も滞りなかった。
でも、借金まみれになり、催促の電話や手紙がガンガン来て
「逃げたい、逃げたい」
って、ノイローゼ気味になっている時、
今の会社を創るきっかけになった社長さんに会ったんです。
「おまえ、逃げるな。人生、逃げるのは簡単や。
どこかに行ってやり直すのも簡単やけど、
あえて逃げへん人生を選べ」
そう言われて、僕は出資や投資をしてくれた人に
一人ひとりお菓子を持って頭を下げに行ったんです。
殺される覚悟で。
「すみませんでした! 失敗しました!」
頭を下げ続けた。
すごくカッコ悪いし、中には許してくれない人もいた。
だけど、そうやって一度フラットな状態に戻したのね。
そうしたら、今のうちの顧問がお金を貸してくれて
「ほんまに貸すねんで。だから、そのお金で商売をせえ」
そう言われて始めたのが、今の仕事なんですよ。
利益が出て、出資してくれた人にお金を返しに行くと、
「まさか返ってくると思わへんかった!」
って、みんな言う。
そこから縁が広がって、仕事の紹介が来たりとかもするんですよ。
この前も、やっと、3年かかってある人に借金を返しに行ったんです。
その人は東京でお店をやっているんだけど、
「殴られる覚悟です。僕、ここで土下座してもいいです!」
と言って店の前で謝った。そしたら、
「ええよ、ええよ。
香川ちゃんが元気でおってくれたら、それでええんや。
香川ちゃん、落ち込んだらあかんで」
と笑顔で言ってくれて。
感動しましたね。
3年かかったけど、やっと恩返しができた瞬間でした。
あの時逃げなくてよかったと本当に思いましたね。

結婚って人生の中でも大きなステージだと思うんですが、
仕事をしていてうれしいのはどんな時ですか?

この仕事で一番うれしいのは、
「ありがとう!」を一生言われること。
「結婚が決まりました。香川さん、ありがとう」
「子供できたよ、ありがとう」
「孫ができたよ、ありがとう」
「おばあちゃんは何で結婚したの?」
「いやあ、ヴィーノという所に行ってな、
そこに香川さんというええ人がおってな・・・」
と、ずっと言われるわけですよ。
これだけ「ありがとう」と言われる仕事はない。
これは究極やな、と思いましたね。
本当に楽しい仕事ですよ。

これから先を、どのように見据えていますか?

僕らの結婚相談所は、
「結婚だけしたいなら入らないでくれ」
と言うんですよ。
ヴィーノは、5年後、10年後、20年後に、
「幸せな人生を送れてよかった」
「こんな幸せな結婚生活を送れてよかった」
と思えるような相手を探す場所なんです。
経営の考え方もいろいろあると思うんですけど、
たとえば黒字になった時、支店を増やすという選択肢がある。
売上も上がるし、幸せになる人も増える。
でも、僕はそうしたくない。
水平展開よりも垂直展開をしたいんです。
1店舗で1000人のお客さんなら、
5店舗作れば5000人のお客さんになる。
でも、僕は1000人のお客さんをもっと深掘りしたい。

結婚後もお手伝いをする、という意味ですか?

そう。だって僕らにしてみたら、
出会う前から知っている二人なんですよ。
結婚式の時、誰が一番、二人のことを知ってます?
家を建てることになった時、誰が一番、二人のことを知ってます?
僕らが一番知ってんねん。
僕らがその人達のライフプロデュースをしていきたい。
それが僕のライフワークでもあるし、夢。
夢じゃないな、達成すべき目標ですね。

そこまで考えているんですね。

たぶん、目の前にかわいい女の子がおったら
浅井さんはすぐ声をかけられる人やと思うんです。
でも、そういう特殊な人は世の中には少ないんですよ。

特殊なんですか(笑)

圧倒的多数の人が声をかけられないんです。
35歳の男性が、32歳の女性と結婚が決まったのね。
彼がある時、相談しに来たんです。
「香川さん、お話があります。
僕が子供好きなのは知ってると思いますけど、子供、いいですわ。
彼女がほんまに大事なんです。
香川さんだけに言いますけど、
セックスになるとものすごく痛がるんです。
あれだけ痛がる彼女を見たら、子供はなくてもいい。
彼女を大事にしたいんです」
そういった相談。
話をよくよく聞いてみると、
彼はセックスの経験がなかったわけ。
やり方をちゃんと知らんねん。
いきなり突っ込んでも痛いやんか。
でも、若い頃ってよくわからへんでしょう?
ちゃんと前戯をして、愛を持ってやると痛くなかったりするやんか。
それがわからなかったわけ。
今は『30歳の保健体育』っていう本も出てますからね。
そういう本を持ってきて彼に渡したら、
後日「できました」って。
そういうこともあるねん。
そういう人が結構多いのよ。
わからへんて。
性生活はすごく大事。
そこがうまくいかんと子供もできひんし、
夫婦生活もうまくいかないでしょ。
でも、そこを教える場がないのよね。
それをやるためには、ヴィーノが
「幸せな結婚生活を応援する会社です」
と、ちゃんと知ってもらえたら、信用できるやんか。
僕や浅井さんにとっては当たり前のことでも、
普通の人でわからんという人が実は結構多いんですよ。
僕が言うたことなんて、何も特殊なことじゃないでしょ。
でも、これが結婚相談業界では非常識なんです。
「そこまでせんでもええ」って言われちゃう。
成功率が高くなりお客さんに喜ばれるのは、結局そこじゃないかと思う。
僕らは当たり前のことをやっているだけなんですよ。

お話を聞いていると、
結婚相談業じゃない気がするんですよね。

エネルギー産業なんですよ。
「俺らはエネルギー産業をやっているんだ!
エネルギー産業やから関西電力と比べろ!」
と、言ってますもん。
だってそうでしょう?
一部上場企業も世の中を変えるけど、
僕ら結婚相談所も世の中を変えるやんか。
そういう気持ちでやってるんです。
朝礼で全員のNO.1宣言を発表したりするんだけど、
結婚相談所で朝礼をやることがそもそもおかしいからね。
他にも、「For you time(フォーユータイム)」という制度があるんです。
自分の仕事を圧縮させて、
20分~30分、他人の仕事をする時間を作るんですね。

その制度おもしろい!

人の仕事もわかるし、人から仕事を頼まれれば自分も頼みやすいし。
あとは、その月で一番がんばった人に商品を渡す「ハッピー大賞」とか。
そういう、けったいな結婚相談所なんです(笑)

人の仕事がわかるのは有益ですよね。
自分だけの世界に入っちゃうと視野が狭くなるので。
社内制度に力を入れることになったきっかけは何かあるんですか?

斎藤一人さんの一番弟子である柴村恵美子さんに
「なかなかいい報告書が上がってこないんですよ」
と話したら、
「香川ちゃん、それは楽しさが足りないの。ゲームにしな。
うちは一番いい報告した人に報告大賞といって、商品をあげているの」
と言われて「報告大賞」を始めたのがきっかけ。
「ありがとう大賞」や「ハッピー大賞」とかね。

なるほど。では、ここからは一問一答形式で。
30歳になる不安はなかったですか?

30歳で起業しようと思っていたから、
「来年に起業せな!」という焦りはありました。

憧れている方はいらっしゃいますか?

僕は尾崎豊が大好きなんです。
尊敬する人は尾崎豊ですね。

それはなぜですか?

僕は世の中に影響を与える人が一番すごいと思う。
お金を稼ぐことよりも、人の心に影響を与えること。
それほど強いものはないと思う。
人って感情で生きているし、心はすごく大事やから。
僕の中で一番世の中に影響を与えた人物が尾崎豊なんです。
尾崎豊を越えるくらい、世の中に影響を与えたいと思います。
結婚相談所という業界でね。

好きな本はありますか?

清水克衛さんの『まず、人を喜ばせてみよう』
僕は33歳まで本を読んだことがなかったんです。
その本に書かれていた内容に衝撃を受けました。
人にすることが3つある。
「笑かす」「泣かせる」「びっくりさせる」
すごく簡単で深い本でもないんやけど、
僕にとっては大きなきっかけだった。
「驚き」「喜び」「感動」が僕のテーマやったんですよ。
「人を喜ばせることが驚きと喜びと感動や」
目の前の人を本気で、
笑かして泣かしてびっくりさせたらええやん。

若い人やこれから起業したいと思っている人たちに
アドバイスがあればお願いします。

「一歩一歩、ヒット」
これは知り合いの経営者から聞いたんですけど。
「ホームランを狙ったらあかん。
内野安打でもいいからヒットを狙う。
バンドでもええから塁に出ることを狙う。
ヒットを打ってたまたま当たったのがホームラン。
ヒットを打ち続けろ」
当たり前のことをコツコツ続けること。
やっぱりそれが強い。

それでは、最後に、
29歳の自分に向けたメッセージをお願いします。

これは昔から僕が実行している言葉ですね。
「思い立ったら今!」
「あそこのラーメン食いたいな。明日か来週にでも行こうか」
それじゃダメ。
そのラーメン屋が潰れていたらどないするねん!
「思い立ったら吉日」ってあるじゃないですか。それでは遅いの。
今動くこと。
これは20代の頃から変わらないですね。

今日はどうもありがとうございました!