61人目 岡崎充さん:株式会社トレンド・プロ

会社名:株式会社トレンド・プロ
URL:http://ad-manga.com/
公開日:2010年10月27日


今回の旅は、株式会社トレンド・プロ 岡崎充さんです!

まずは、どのようなお仕事をされているのか教えてください。

広告にマンガを活かす
という手法で仕事をしています。
もう22年になりますね。
起業したのは33歳の時だったかな。
うちのロゴマークには双眼鏡が入っているんだけど、これは
「半歩先のビジネスは何だろう」
って、常に探しているイメージです。
時代に先駆けたことをやりたいと思ったので。
マンガの事業とは別に、
自分のライフワークとして大学生を対象にした「岡崎塾」というものをやっています。
就活塾なんだけど、内定を取るテクニックなどは教えませんし、
学生たちには遠回りさせたり、
質問にもあえて答えなかったり(笑)
どちらかというと「人生塾」ですね。

33歳で起業されたということですが、
20代の頃から「社長になりたい」という気持ちはあったのですか?

ありましたね。
大学を出て、会社に入って、
だんだん自信もついてきたんでしょうね。
27~28歳の頃には
「いつか会社をやりたいな」
と思ってました。

業態は決まっていないけれど、
いつか社長になりたい、という感じでしょうか?

そうそう。
大学を出た後はね、オートバイメーカーのヤマハに入社したんです。
最初はオートバイのルート営業でした。
ちょうどホンダとの競争真っただ中でね。
毎日毎日、営業で駆けずり回ってましたね。
厳しい状況の中で売り上げをあげないといけないから、大変な時期でした。
でも、僕はその頃まだ若かったし、
精神的にもタフだったから。
今思えば、20代の中盤でいい経験をさせてもらいましたね。

その後、20代後半で起業を目指されるわけですが、
何かきっかけはあったんでしょうか?

きっかけは二つでしょうね。
一つは、営業をやっていく中で自信がついた。
当時、営業はトップにならなければ意味がない、
というような意識があってね。
トップを目指して日々がんばっていたんです。
よく、「経営に必要なのは営業力だ」とかって言うじゃない?

そうですね。僕もずっとそう思っていました。

でしょう? そうなんだよ。
だから、営業やるからにはトップにならなきゃ、
という思いがあったのと、
それに加えて、僕には営業から本社の企画に行きたいという目標があって。
物を売るのもいいけれど、
商品の開発やプロモーションにも興味があったんです。
でも、異動するためには営業でトップになる必要があった。
だから、入社後3年間くらいはトップになることばかり考えていましたね。
そのおかげで自信がついてきたんだと思う。
もう一つは、会社組織で仕事をしていく中で、
だんだんと企業というものの体質がわかってくるじゃない?
それが、自分の生き方と合っていないな、と思ったんだね。
ヤマハ時代の僕は一匹狼みたいなところがあって、
上司にも言いたいことは言う、というタイプ。
ただね、入社前に読んだ本に、
「上司に意見したければ、みんなの前で言うな」
って、書いてあったんですよ。
それで僕は、何かある度に上司を会議室に呼び出して(笑)
とにかく一生懸命話をしてましたね。
そのおかげで企業の体質みたいなものが見えてきたし、
その結果、自分には合わないと思うようになった。
自分ならもっとこんなことができるのに、って
どんどん思うようになっていったね。

もともと創意工夫されるのが得意だったんですね。

どうなんでしょうね。
僕はね、19歳くらいまでは、一言でいうなら「さえない奴」だったのよ(笑)
目立たないし、勉強も特別できない、
ケンカもできないし、スポーツもたいしたことない。
それがね、自分でもだんだん嫌になってくるんだよね。
19歳の時に、
こんな人生なら死んだほうがマシだ!
って思ってね。
一発逆転の人生にする、と決めたんです。
そこから、僕の人生は確かに変わり始めたんです。

「逆転の人生にしよう」と決めて、
まずどんなことから始められたんですか?

高校を出てせっかく入った大学をね、一ヶ月でやめるんです。
うちは母子家庭でね、
母親が一生懸命働いて息子を大学に行かせてくれたのに、
その息子は大学を辞めるっていうんだから、
そりゃ反対するよね。
でも、生意気ながらすべり止めで受かった大学に通うつもりはなかったんです。
だから母親の涙で滲んだ退学届をさ、
教務課に出しにいったんですよ。
それが5月だったかな。
教務課を出たらすごくいい天気でね。
今でもその時の空を覚えているんだけど
「自分の人生は本当にここから始まるな」
晴れ晴れした気持ちだった。
「学生」という肩書きすらなくなった。
でも、不安や寂しさより、
わくわくした気持ちでいっぱいだった。

自分を変えよう!
と決意するほどの原動力はどこからきているんでしょうか?

まず一番悲しかったのが中学の英語の授業。
「弱い」っていう意味の、「weak」って単語を習ったのよ。
そうしたら、
「岡やんや!」
って、女の子に言われたの。
あ、僕「岡やん」ってあだ名だったんです。女の子にまで、
「弱い」イコール「岡やん」
って、言われるようなイメージだったんです。
これは嫌でしたねぇ(笑)
だから、ちょっと変えるんじゃない、
180度異なる正反対の道を歩もうって決意したんだよね。
それで、大学を辞めた後、外資系の会社に入ったんです。

外資系の会社と出会うきっかけはあったんですか?

新聞にね、広告が出てたんですよ。
「マーケティングのお仕事。誰にでもできます」って。
説明会に行ったら、狭い会場に人がぎゅうぎゅう入っててさ。
みんないい人なんだけど、訳ありの人が多くってね(笑)
説明もなかなか面白かった。
ちょうど僕は何かにチャレンジしたかったし、
何より誰も僕のことを知らないっていう場所に入っていきたかった。
「弱い」イコール「岡やん」
っていうイメージで誰も僕を見ない場所にね。
そこで僕が体験したのは、
何も知らないただの19歳でも、
しっかり組まれたマニュアルにそってやるだけで物が売れる、ということ。
その会社のやり方として、
毎週特定の地区にみんなで営業に行くんだけどさ、
遠い場所の時は旅館を借りるのよ。
朝は旅館で「行くぞー!」ってかけ声をかけてから出陣してね。
終わったら旅館に戻ってきて、
だいたい誰かしら契約が取れてるから
お祝いのために毎晩宴会ですよ。
そうやって大人の文化を学びましたね。

今回のテーマが「29歳」なんですが、
29歳はどのような一年だったか覚えていらっしゃいますか?

覚えてる覚えてる。29歳はね、結婚した年。
激動の年だったなぁ。
結婚して、念願のトップセールスになって、本社への異動も決まって。
結婚に至るまでがちょっと面白いんだけど、
当時はトップセールス目指してがむしゃらにがんばっていたんだよ。
でも、いくらがんばっても、トップになれない。
それである時にね、営業に行く途中で
「どうせダメだ」
と思ったことがあったの。
19歳の時に決心して以来、もうある程度強くなってるのよ?
だけど、自分の弱い心が出ちゃったんだね。
「あ、自分は弱い人間なのかもしれないな」
って、その時思ったんです。
その日家に帰って寝てたら、
夜中の2時にぱっと目が覚めたんですよ。
僕は一度寝たら途中で目を覚ますなんてことはないんです。
それがどういう訳か目が開いちゃってね。
そしたら、天井に誰かいるんですよ。
今となっては「神様」って呼んでるんだけど、
その人が僕に言うわけ
「お前、自分の弱さが分かったか」
って。
わかりました、って答えたら、
「じゃあ結婚していいぞ」
って、言うんですよ。
それで本当にその後結婚することになるんだよ。
すごいでしょう?(笑)

29歳で結婚されたのには、神様の登場があった、と(笑)

そうそう(笑)
その神様がね、聞いてくるわけ
「本当は誰と結婚したいんだ」
って。それで考えたんです。
その時付き合っている人がいたんだけど、
結婚を考えたら、その人じゃなくて同じフロアにいる経理の人かな、って。
そうしたら、
「お前は今、人生で大事な判断をした。
もしその人と結婚できたとして、その結婚が間違ってたとか
うまくいかないなんて言うようなら、その時は社長なんかやめろ」
って、言われて。
僕は、社長に必要なのは「判断力」だと思ってたんですよ。
だからまぁ、この人の言うことの筋は通ってる。
次の日起きて、夕べのは何だったんだろうって思いながら、
その経理の人にね、デートを申し込んだんです。
デートもすんなりOKをもらってね、
初めてのデートで浜辺に行って。
そこで、自分が将来やりたいと思っていることを彼女に話したんです。
当時僕が描いていたことっていうのは、
今のこんな会社なのよ。
小さくてもいいからユニークな会社。
こんなアロハ姿で出社できて、
面白いことをやれる会社をつくりたい、と。
でも、僕は弱い。
いい時もあれば落ち込む時もある。
だから、あなたの力が必要なんです。
僕の夢のために、一緒にきてくれませんか、
って、話したんです。
そしたらね、「いいですよ」って言うんだよ。
ドラマみたいでしょう?(笑)

ドラマですね(笑)
29歳の頃に描いていたことが、まさに今叶ってるんですね。

そうなんだよ。幸せだよね。
だからね、いいビジネスモデルがあるとか、
流行っているからとか、そういうのは関係ないんだね。
それよりも、大事なのはパートナーですよ。
やっぱり人って弱いものだから、
補完してくれる人というか、
そういう存在が必要なんです。
人生のパートナー選びはここだと思うね。

若い人たち、特にこれから起業したいと思っている人たちに向けて、
何かアドバイスをいただけますか?

僕が常々思っているのは、
「自分と社会を5割以上わかる前に動いた方がいい」
ってことかな。
半分以上わかってきちゃうとね、
どうしても足踏みしちゃうんだね。

自分のことをわかってしまって、
「これは向いてない」とか「うまくいかない」とか思ってしまう、ってことですか?

そうそうそう。
半分もわからない状態だとさ、
わかってないから行動できちゃうし、
当然失敗するんだけど、それが必要。
わかってないからある意味で馬鹿になれるし、
そういう強さってあると思うんだよ。
いろいろ経験を積んでくるとさ、頭で考えちゃうでしょ。
「これはきっと上手くいかないな」とか、
予測できるようになっちゃうから。
それはつまり、その人の中の常識的な範囲でしか
行動を取れない、ってことなんだと思う。
そういう常識にとらわれずに行動できちゃうのは、
自分や社会がわかっていないからなんだよ。
その時ほどチャンスだから、何でもやってみるべきだと思うね。

なるほど。今の時代、行動に移せない人はすごく多いと思うんです。
インターネットがあるから、やる前に調べられますし。
そういう人たちに行動を促すのは難しいですよね。
「やれ」と言うわけにもいかないですし…

それは永遠のテーマだよね。
僕の中でも「人を育てる・成長させる」っていうのがテーマで、
どうやったら人間は成長するんだろう
っていつも考えてるね。
人間は怠惰な生き物だから、追い込まれないとやらない。
そう考えると、行動しない人というのは、
行動しなくても済む人
とも言い換えられると思うんだよ。
でもね、成長する人というのは、自分で自分を追い込む。
できるかどうかわからない無茶な目標立てたりさ。
浅井さんみたいに、インタビュー人数100人、とかね(笑)

確かに経営者の方には
そうやって自分を追い込んで行動する人が多い気がしますね。

そうだよね。
ただ、他人の成長となると、やっぱり難しい。
本人がやる気にならないといけないからね。
難しいんだけど、実は今、
そこにチャレンジしてみようと思ってるんだよ。
若い時、それこそ社会に出る前に、
誰かの成長の手伝いとか、
良い意味で「人を動かす」
という経験をさせてあげられないかな、って。

「人を動かす」という取り組み、
具体的にはどのようなことを?

内定者の子たちを対象にワークショップをやろうと思ってる。
そこでね、彼らに少しだけ未来を見せてあげるのはどうかな、って。
未来というのは、内定者の子たちが将来リーダーになった時のことね。
想像してもらうんです。
「皆さん優秀だし、きっと入社後がんばるだろうから、
すぐにリーダーになると思う。
でもね、会社というのはそんな人ばかりじゃない。
言われても動かなかったり、伝えたことをやらなかったり。
そういう人を皆さんは部下として持つことになる。
その人たちに対して、どうしたらいいと思う?」
彼らは内定者だから、もちろん彼ら自身だって
仕事もまだまだこれからだし、
リーダーになるのも先のことですよ。
でもね、あえてそれを考えてもらうんです。
就活生とマッチングさせようと思ってるの。
就職活動って、みんな悩むでしょ。
そこをね、内定者の子たちに指導させたらどうかと思って。
悩んでる子、行動できない子、不安な子
そういう人たちに対して、何ができるのかを考えて、行動に移す。
もしそれで就活生が何かひとつでもチャレンジしたり、
内定取れたりしたら、嬉しいじゃないですか。
成功体験になりますよね。

そういう体験って、
確かになかなかできないものですよね。

本当はすごく必要で、大事なことなんだけど、
内定者の子たちがそれを体験できるか、
っていうと、まずできない。
でも、会社に入ったらぶっつけ本番でしょう?
いきなりやって成功する率は当然低いし、
できない状態が続くとストレスにもなりかねない。
人間は、人を成長させると
必ず自分自身も成長した実感を持てるんですよ。
それはビジネスじゃない。
「貢献」じゃないですか。
お金に換えることはできない貴重な経験なんです。
本を読んだり、人の話を聞いたりすると
インプットはできますよね。
ところが、アウトプットするとなると相手が必要でしょ。
アウトプットの場ってなかなかないんです。
だから、僕が用意できないかな、と思ってるんだよね。

素晴らしいですね。
相手をやる気にさせることはできても、
実際に行動を起こすまでとなるとすごく壁があると思うんです。
就職する前にそういう体験ができるのは貴重ですね。

内定者の子たちにはね、
内定取って、会社に入るまでの間を
ただなんとなくアルバイトしたり、
遊んだりして終わらせてほしくないわけ。
誰かを成長させたり、
育てたりする経験というのは
ものすごくパワーになるんです。
そしてその人間力は、結局のところ
友達との付き合い方とか、
彼氏・彼女との付き合い方とか、
親との付き合い方とかにも影響してくる。
僕の考えでは、そういう力を持ってる人は
ラーメン屋になろうが営業になろうが、うまくいきますよ。
どんな商売をやるかじゃない。
その人の人間力なんですよね。

29歳というテーマに戻りますが、
29歳から30歳に切り替わる誕生日の思い出は何かありますか?

あー、あるねぇ。
事件があったからね、よく覚えてますよ(笑)
誕生日の少し前から出張に行っていてね。
広島に行ったら、ちょうど牡蠣が解禁日だった。
僕、生牡蠣大好きで、たくさん食べて、、
そしたら、あたっちゃったんです。
もう、生まれて初めて経験するような苦しさ。
だから、30歳の誕生日は、
牡蠣にあたって入院してました(笑)
僕自身、実は30歳というのをすごく大事にしていて。
若い人に、よく
「30歳でビジネスマンとしての道が決まっているか」
って、聞くんですよ。
社員にもよく言ってますね、
「今はいいけど、あと半年で30歳の誕生日だろ?
そこから先は、俺は厳しいぞ」
ってね。
20代の時はうまくいかなくてもいいんです。
結果が出なくても、やることをやっていれば
30代で結果が出てくると僕は思っているので。
だから、浅井さんのインタビューの趣旨にはすごく共感しますよ。

ありがとうございます。
では、最後に29歳のご自身に向けたメッセージを色紙にお願いします。

今日はどうもありがとうございました!