95人目 長岡利明さん:株式会社シスウェーブ 取締役会長(元社長)

長岡利明さん
会社名 株式会社シスウェーブ 取締役会長(元社長)
URL http://www.syswave.jp/
公開日 2011年10月23日

今回の旅は、株式会社シスウェーブの長岡利明さんです!

まずは読者向けにお仕事のご紹介をお願いします。

仕事の業種は半導体のテストソリューションです。
半導体集積回路(IC)の評価やテストをやっているのですが、その専門の開発会社です。
日本にこういった会社はあまりありません。
ICの評価やテストというものは、そのICが正しく動くのか、
温度に対して正しく動くかなどということを
テスターを使って行うのです。
私どもはそのためのプログラムや装置を開発したりして、
評価やテストを行います。
そのためには基礎技術としてICの回路や幅広い技術を理解できる必要があります。
他には測定時間や検査時間の時間短縮も行っています。
企業によっては、毎年、テスターの設備投資で何百億円もかけるところがあります。
そのような設備において、10秒かかるものを5秒で済ませば設備投資も半分になります。
そういったテストの時間短縮を手がけています。

会社は41期目ということですが、
この会社に関わったきっかけというのは?

もともと私は某大手企業の半導体部門に在籍していたのですが、
40代の中頃のあるとき、ある方から声をかけられたのがそのきっかけです。
「経営をやってみないか?」と。
私に声をかけたきっかけはわからないのですけれど、
最初は「よく知らない会社ですから」と言って断っていました。
で、5~6年経って、「会社がうまくいかないから」と再度お話が来たのです。
その時に「じゃあ、やってみましょう」ということで引き受けたわけです。

受け入れるにしても、
悩みや葛藤は多かったんじゃないですか。

もちろん。最初は「ちゃんと経営できるかな」って思いました。
技術者としてずっと大企業の技術畑にいたので、経営なんてしたことないですから。
ただ、自分も29歳から30歳になる変わり目の時から、
自分で会社を経営したいと漠然と思ってはいました。
相手もそれを何となくわかっていたのでしょう。
29~30歳ぐらいから自分でやらなくてはいけないとは思っていましたから。
だから、会社へ入っても、いつも自分の頭でいろいろ考えていました。
単なる技術バカじゃダメですから。
例えば、このインタビューにもビジネスネタが詰まっているわけです。
入社した人がみんな同じ会社に一生勤めるわけではないでしょう。
転職などいろいろあるわけです。
その時に役に立つよういろいろなことを経験し、
たくさんの人と出会っておかなくてはいけません。
技術だけに携わっていたらそのプロにはなるけど、
ちょっと道をそれると何もできない。
そういう人間は、今後ダメだと思うのです。
常々、社員には「幅広い人間にならなくてはいけない」と伝えています。

そのような思考回路になったきっかけは何かあったのでしょうか?

大学院に行った時に新しい友達がたくさんできて、
そのときに相当刺激を受けました。
「なるほど、みんなこんな考えを持っているのだな」と。
そこで自分なりに考えて、
単なるサラリーマンになってもいけないなと意識することが多くなってきました。

多くは流されてしまうサラリーマンになるほうが多いと思います。
長岡さんが学生時代のときは起業といった話もあまり出ない頃かと思いますし、
すごく珍しい考え方で、周りからも色々と言われたんじゃないんですか。

「大手企業のカラーに合わないね」って言われましたね(笑)
まぁ、会社はおもしろかったですけれど。
私が勤めていた大手企業もちょうど上り坂で何をやっても当たる時代。
でも、最終的には自分でやらなくてはといつも思っていました。
というのも、ご承知のように日本企業には定年制があります。
それが大問題。人から定年だと言われたくありませんから。
今になってみると会社を辞めて、成功でした。
今、みんなリストラされてるじゃないですか。
自分で起業すると定年はないので、体の続く限り働く事ができる。
今、もし大手企業に勤めているままだと、リストラされていたかもしれないですね。
技術がちょっと変わると使いものにならなくなりますから。

流行りの技術をやってもブームが去ってしまうと、すぐに消えていく。
半導体も同じようなものなんですね。

例えば、OSの分野ではwindowsから始まり、
今はandroidなども出てきてこの分野もめまぐるしく変化、進歩しています。
そのうち、需要が変わったら全く異なるOS技術が主流になることもあるでしょう。
そしてまたOS自体が主流技術で無くなることも考えられます、
したがっていろんな技術を幅広く知っておかなければいけない。
若い時は幅広く物を考えない傾向があります。
よく上司に「V字型人間になれ」と言われていました。

V字型人間とは?

槍みたいに誰にも負けない尖がったもの技術や自信など)を持ち、
V字型のように幅広い知識を持つ。それが「V字型人間」。
ちなみに語録にもなっているのです。
昔の人はうまいことを言っています。
スーッと深く入るけどポキッと折れちゃってはいけないので、
ドンドン深く入るほど、幅を広げて(V字)行かなくては成りません。
そういう人は伸びると思います。
ただ、世界一の技術者になるには、尖がっていかざるを得ない。
周囲のことなんて見てられないですよね。
よそ見をしていたら、世界一になんて到達しないから。
でも本当に伸びる人は幅も広くやっています。
人の仕事まで手を伸ばします。
本人には仕事の境界は無いのです。
それが本当に柔軟な頭の証拠。
尖がっている所は尖がっているし、広がっている所は広がっている。

なるほど。V字型人間。わかりやすいですね!
今回のインタビューのテーマは「29歳」なんですが、
先ほど、起業を意識されたとおっしゃっていましたが、
他にもなにか転機はありましたか?

結婚したばかりでしたね。
仕事面では、自分で会社を作ろうとしていた頃でもあります。
友人と一緒に会社を作ろうと言って、製品を開発しました。
その時の製品名を「TDS」と名付けていました。
タイムドメインシステム、要するに今の監視システム。
例えば、無人工場に泥棒がどこから入ってもわかるようなもの。
無人工場は嵐になったら様子を見に行かないといけないのです。
しかも山の中なら大変ですよね。
その工場の様子を自動的に遠隔地から見ることができる。
今はテレビカメラを置いたら携帯でも見ることができますよね。
そういうものが必要だねと。
当時はまだなかったものですから。

いろんな事を考えていたんですね。

いろんな起業ネタを考えていましたね。
起業するには必要な技術や知識のある人を知っておかなければいけません。
自分たちだけで全部やろうと思ってもうまくいかない。
会社を大きくしていくためには、他の会社と提携して、
弱点をお互いに補完していかないといけません。
お互いに利益を分け合って、信頼関係を結ぶことです。
そうしないと、どこかで裏切られてしまう。
こっちが裏切ることがあれば、向こうも裏切ります。

実際にそういった経験はあったんですか?

いろんなことがありますね。
もちろん裏切られたりしたことも多々ありました。
今は、上場してから、その様なことはないのですが、
昔は見ず知らずの変な人が突然来たこともありました。
社長室に突然入ってくるのですよ(笑) いわゆる脅しです。
いろんな問題が本当にありました。
「会社の寿命30年」説というのはご存知ですか?
30年も経つと、会社自体だんだんおかしくなってくるので、
社員一人ひとりが幅広い意識を持っておかないといけないのです。
幹部になる人も「会社の寿命30年」を経験した方でないと危ないです。
ベンチャー企業でその経験が無い人は、
「これは絶対成功する」
という言葉を使いますが、「絶対」なんてありえないです。
私は今までの日本のベンチャー企業が失敗したのはそこがポイントだと思っています。
周りに参謀となる失敗者がいなかった。
やっぱり、失敗者は痛い目にあっていますから。
ベンチャー企業にそういう人がいないと危なくてしょうがないです。
なんの暗礁があるかわかりません。
でもね、人徳がないと、
参謀としてふさわしい人も寄って来ないのです。
人徳があるから人が寄ってくるのです。
やっぱり、人徳がないとリーダーになれないです。
「この人ダメだな」って、嗅ぎつけてしまう。
付き合いを自然と途中でやめてしまう。
また役職が上がれば上がるほど人徳も必要になってきます。

20代の若い人たちはまだ「人徳」というものにピンとこないかと。
どう意識していけば、人徳って身に付いていくんでしょうか?

経営者は人を好きにならないといけないでしょう。
自分が人を好きになれば、相手も好きになる。
人を選別するのはよくないです。
人を差別したり、レッテルを張るのは問題外。
環境が変わったら、いい方向に変わるかもしれませんから。
そういうふうに考えていると人を許せるようになるでしょう。
その心持ちでいたら、自分の器も大きくなると思います。
あの人は「許せない!」とか言って怒っていると
自分の心も死んじゃうわけです。
もっと余裕を持って、
「まぁ、いいか」という「いい加減さ」
が必要なんです。
最近、よく言っているのは
「いい加減さ」と「謙虚」
です。この2つがないといけません。
「いい加減さ」というのは、
あまりピンピン何でも反応してはいけない。
わかったかわからないような顔をしておけばいいのです。
自分の悪口を言われているのか、
誰か他の人の悪口が言われているのか。
実は自分の悪口を言われているのだけれど、それに気がつかない。
それぐらいがちょうどいい。
その様なことには鈍感で気がつかない方が良いでしょう。
あまり鋭敏に反応してはいけない。
本当に天然ボケでは困りますけど。
本質がわかっていないとね。

本質ですか?

賢い人は一を言えば、パッと本質がわかるわけです。
一を言っただけでわかる人はすごく伸びる人です。
上司が何をやりたいのか。
その人の考えている本質がパッとわかる。
トップは自分が何を考えているのかを社員たちに言わなければいけないし、
社員たちはトップの言葉の裏を読みとらなければいけない。
上司が自分の方針を示さないと部下は不安になるわけです。
飲み屋で上司の悪口を話すのも頷けます。
何を考えているかがわからないのですから。
とくに組織が大きい大企業になる情報が末端まで伝わらない。
少なくとも上司は直属の部下に何時も夢を語っておかないといけないですね。
夢を語らない上司はダメ。
社長も当然そうです。
皆さん、自分の夢を持っているはずだから。
持っていなくても持つようにしなければいけません。
それがないと、部下は「この人、何を考えているかわからない」となります。
ただ「あれやって、これやって」と言っても、
何のためにやるのかわからない。
トップは常々、夢や目標を言っておかないと、部下はわからない。
「常に夢と目標を持て!」

「夢」という言葉が出てきましたが、
長岡さんの夢や方向性を教えてもらってもいいでしょうか。

今まで、受託から長い時間がかかりましたが、
新しい自社製品を出しました。
最初は受託から始まり、
力がついてきたら自分たちの培った技術で自社製品を作る。という流れ。
40年かけ企業体力も付き、やっとここまで来ました。
その力をもっともっとつけていきたいですね。
技術の蓄積は結構ありますから、
これを使って何を生み出すかが最大重要事項(ここでは市場価値品)です。
一般的には、皆さん尖がった人だから市場価値がわからない人が多いわけです。
広い世の中に出た時、
自分の技術の市場価値がどれくらいかわからないのですね。
だから、自分の市場価値を理解しなさい!
と社員には常々伝えています。
技術にどのくらいの市場価値かわからないと、
穴の中にいるモグラと同じですから。
市場価値がわかっていると、
自分の技術はこれじゃいけない、
世の中にはこんな技術があるのだ!
ということがわかるじゃないですか。
うちの会社もその段階に入ってきたので、
もともっと市場価値をわかってもらいたい。
事業モデルですがハードは材料費がかかるし修正も大変です。
その点、ソフトは人件費がほとんどで修正も楽です。
そこから入っていった方がいいだろうと。
もっとよく考えれば、ハード、ソフトを単品で売っても
毎年80万円、60万円と値が下がる。
こういうビジネスモデルはよくないと気づきます。
システムで売っていかないと利益が出ない。
単品ビジネスは毎年価格も下がりますから。
例えば、フランスは水道事業一つとってもシステムで稼いでいるのです。
彼らの水道事業は貯水池から水が出るまで、サービス業から何から何まで取り込んだ、
いわゆるシステム受注です。システムで入ると他社が参入するのは難しいのです。
だからこの例ではフランスに対して水の分野で参入するのは難しい。
その逆で、日本の多くの会社は単品売りが多いので、
次々と開発しないといけない。
しかも一発外れたら開発費、在庫は吹っ飛んでしまう。
昔から会社は三本柱を作れ!と言うけど、
そうしないと、ちょっと失敗すれば会社が無くなってしまう。
現代はスピードが速いから、本当に恐ろしいです。

では、20代でこれから起業したい人たち向けに
今のうちにやっておいたほうがいいことってありますか?

英語をやらないとダメでしょうね。
製造業からサービス業を含めてみんな海外に出ていかなくてはいけない。
1年遅れてもいいから留学した方がいいですよ。
将来伸びますね。
世の中のことを先に知っているから自信にもなります。
卒業証書を頂くのもいいが、遊びに行くだけでもだいぶ違うと思いますよ。

外の世界をどんどん見ていくことが
重要ということですね。

キンキラキンのブランドものを買うのじゃなくて、
教育に投資してほしい。
世の中を見ることに金を使え!
と言いたいですね。

今の若い人たちはお金がないとう理由もあると思いますが、
海外に行かなくなっている人たちも多いです。
日本がどんどん衰退していっちゃうのかなと心配になりますね。
なぜだと思いますか?

色々な原因や理由があるとは思いますが、
一つに、親の影響もあると思います。

親があまり旅や旅行に好意的でないことが、
今の若い人達の旅行や旅離れを増やしているのかな。とは思います。
過保護と言えるのかもしれないですが、、、

私も北海道から九州まで求人活動のために大学、高専を回っていましたが、
関東の会社となると、親が反対するのです。
先生はなるべく外を見なさいっていうのです。
でも、親が反対する。特に一人っ子だと手元に置きたがる。
子供も、親の面倒を見なければいけないと思っている。
それの方が当面楽だと考えている。
親なんて20~30年大丈夫ですから、
世界に出て行ってから故郷に戻っても遅くない。
それでも、親は自分の近くに子供を置きたがったり、
遠くに就職することに反対する人が多いのに驚かされます。
信じられないでしょう。
親が後ろで引いているのはいけない。
もっと子供には旅をさせないといけませんね。

とはいえ、親を変えるのは難しいとは思いますが。

そうですね。変えられないですね。
今の子供達は親の言うことを聞くのです。
一見素直でいいのですが、
これがひどくなると問題が起こってきます。
話しは少しそれますが嫁と姑の問題ですね。
息子が母親の言うことばかりを聞くようになると、
嫁さんは苦労するわけです。
とくに息子は親から早く離れないといけないのです。
そうじゃないと嫁さんがかわいそうです。
息子は親ばなれの気持ちが必要でしょう。
自立!が大事
子供の人生なんだから、
甘やかしたら絶対ダメになる。海外に行かなくなるし、
うちにこもってしまう。
今の親は昔の親よりお金を持っているのです。
子供は居心地がいいから家にいるわけ。
よくないですね。

インタビューもそろそろ終わりが近づいてきました。
インタビューしたみなさんにお願いしているのですが、
当時29歳のご自身に向けたメッセージを色紙に書いもらえますでしょうか。

やっぱり行動です!
行動ありきです。
自分の夢を追いかけることです。
私も夢があるから行動したのです。
自分がどうしたいのかというのがあったのです。
自分で新しいことを試したい。
そういったものが潜在的にずっとあったと思います。
ただし、成功するには信用の置ける人と組むことです。
信用がない人とは組まない。
ここが難しいところです。
ただし、人はお金または権力を持つと変わってくるのです。
そこはよく考えてください。
そして、弱みを見せると足もとをすくわれます。
弱みはある程度出してもいいけど、
常に出していると相手も近寄らない。
強いところばかり出したら相手が弱くなるし、
弱いところ出したら相手がバカにするしね。
相手がわかっている人だったらいいですよ。
弱みを見せたっていい。
しかしわかっていない人に弱みを見せるとろくなことがない。
相手をしっかりと見ていかないといけないですね。
それが一番大事なんじゃないかな。
やはり人がすべてです。
いい人との出会いを探してください。
いい人に会えばバッと世界が変わります。
また、特にトップはいい加減な人と付き合ったら、
会社もおかしくなってしまう。
そういう時にちゃんとした経験者が周りにいて、
ちゃんと諌めてくれるか。
謙虚になって人の意見を聞かないといけません。
自分がお金持ちになっても謙虚な気持ちでいないといけません。
お金があるとどうしても自分が驕って来ます。
そうするとそこに隙ができるでしょう。偉くなっても頭を下げる。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」
です。謙虚でないと人はついてこないです。
極端に言いますと、権力を持つと、
自分のいうことを聞かない人はみんな排除するわけでしょう。
あれは権力者の成れの果てですよね。
そして、自分がドーンと落ちるでしょう。
結局、人生ってそんなものじゃないのかと思います。
あんまり調子に乗るものじゃない。
調子に乗ったと思ったならば気をつけること。

本日はありがとうございました。


ママチャリで日本一周している経営者
■Profile:
2007年から毎年分割でママチャリで日本一周を目指す。ほぼ一周を終えつつ、まだまだ走り続ける口実をつくるべく、寄り道企画(四国八十八ヶ所編)を2017年から開始。人に「場を与え、繋げ、拡げる」を基本軸に、法人複数社の経営と一般社団法人1団体の理事として活動中。
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