59人目 林香都恵さん:有限会社匠佳堂
会社名:有限会社匠佳堂
URL:http://ameblo.jp/shokado/
公開日:2010年10月19日
今回の旅は、有限会社匠佳堂 林 香都恵さんです!
まずは自己紹介を含めて、
どのようなお仕事をされているのか教えてください。
「コミュニケーションスキルのつく手書き力」
をキャッチコピーにしています。
仕事内容としては、一般の方向けに
カウセリングと個別診断、それからセミナーを行っています。
私は元々企業のコミュニケーションコンサルタントなのですが、
自分に強みがないことが気になっていたんです。
ほかの人たちがやっていることを始めても意味がないので、
日本人にもっと合うものはなんだろう?
と探した結果、見つけたのが「筆跡」だったんですね。
「筆跡診断士」という職業名だと占い師さんに間違えられることがあるので
「コミュニケーションスキルがつく」
という言葉が必要だと思いました。
そこで業務名を変えて、今の名前にしたんです。
筆跡は、性格分析と自己改革のツールとして
日本人に一番合っていると思うのですが、
残念ながら、認知度はまだまだ低いのです。
たとえば、浅井さんの字を見たら、
浅井さんの性格や心理状態がわかるんですよ。
ただ、浅井さんに一番「ビビッ!」と来てもらえる言葉を選ぶには
コミュニケーション能力が必要になってくる。
筆跡の勉強しかしていないと、
「浅井さんは真面目な人ですよね」とか
「きちんとしていますよね」位しか言えない。
それだと「気づき」を差し上げることができないんですね。
ご本人のお話を聞くことはもちろん大切ですが、
その方がこれからどうしたくて、
今そのために何をしているのか。
または、どんなことに悩んでいるのか。
そういったことを聞いた上で、
その人の「字」を変えてもらう。
その方が、これからの人生の目標に
「より早く向かっていくため」
に、その人の字を変えること。
それが私のお仕事です。
ところで、浅井さんはコミュニケーションって何だと思います?
シンプルな分、難しいですね…。
気持ちを理解することでしょうか。
そうですね。簡単に言うと、
「人との合意を取ること」なんですよ。
たとえば、私が浅井さんに
「今日、ご飯食べに行かない?」
と誘ったとしますよね。
浅井さんは、私のこのたった一回のアプローチで答えを決めているわけじゃなくて、
私の背後にあるものを瞬時に読んでいるわけです。
「林さんと行ったらおもしろそうかな」とか
「何を食べるのかな」とか
「つまらないんじゃないかな」とか。
いろんなことを考えた結果、
「林さんとご飯に行ったら、何かおもしろいことがありそうだ」
と思ったら、誘いを受けてくれるでしょう?
逆に私のやり方やスタンスに賛同していなかったら、
「今日はちょっとやめておきます」と言う。
合意が重なるということは、信頼関係の構築、
つまり、仲良しになれるということなんです。
コミュニケーションは、常日頃の合意の積み重ねによってできています。
でも、日頃の積み重ねを意識せずにコミュニケーションをしている人が
世の中にはとても多いんですよ。
もうひとつ大事なのが、
何かを伝えようとする時に、
AさんとBさんにわかってもらうためには
違う話し方をする、ということです。
人によって感覚と感性が違いますからね。
でも、日本人はすごく正直だから
同じ言い方で伝えるのが誠実だと思っている。
伝えたいことが同じなら手段は違ってもいいはずなのに、
それを同じ手段で正直に言わないと
「ずるい」とすら思ってしまうところがあります。
理論をちゃんと学ぶとわかりますが、
これはコミュニケーション戦略なんです。
ビジネスにおけるコミュニケーションでは
「結果」を出さなければいけないので、
「上司に頼まれたから仕方なくやる」のではなく、
自主的に動いてもらうためにも
戦略を練ることが必要なんですね。
コミュニケーションと同時に、
「自分がどうありたいか」
「人が何を考えているのか」
を字で理解することができたら、とても便利じゃないですか。
「筆跡」に出逢ったお話を聞かせていただけますか。
知り合いの女性経営者が「筆跡診断士協会」に通っていたんです。
彼女に誘われて一度見学に行ったらとても面白くって。
通いたかったけれど、当時は家から遠くて通えなかった。
興味はあったものの、先生のお名刺も無くしてしまって・・・。
それから15年くらい経った頃、友人から
「父親が筆跡診断士になった」
という話を聞いたんです。
先生のお名前を聞いてもらったら、
15年前に私が出会った先生だった。
これは私が学ぶべき学問だ!
と思って、
早速次の日に電話をして、先生のところへ行きました。
「私も習います!」って(笑)
すごい行動力ですね!(笑)
普通は、資格を取るまでに何年もかかるものなんです。
でも、私はせっかちで月1回の勉強会を待てないから、
毎週通ってマンツーマンで教えていただきました。
半年間くらいで資格を取りましたね。
筆跡という手法を、どのような分野で活かされているんですか?
ブログで知り合ったあるお医者さまは、
「患者さんの書く字に病気のパターンが出るな」
と何となく思っていたそうです。
その先生とは医療の分野でも筆跡を活かせるかも、
という話をしています。
すごい!病気の兆候が文字に表れる、ということですか?
病気が表れるというよりも、
たとえば高血圧の人はカリカリしやすい人だったりしますよね。
つまり、いろいろなことに対して「厳しい」人。
一方で、糖尿病の人はダメだと分かっていても食べてしまう。
そういった人の性格傾向は文字に現れるのです。
「それをちゃんと立証できたら予防医学になるよね」
とその先生はおっしゃっていて。
私もすごく興味のある分野ですし、仮に立証されなくても
字を書く練習によるリラックス効果で血圧が下がったりすれば、
副作用もないし、誰にでもできる。
「お金もかからないし、こんなにいい薬はないね」
という話をしています。
こういう未来の話ができるようになったのは、ブログを始めてから。
ブログをやって本当に良かったと思います。
人とのつながりでお仕事が広がるのは素敵ですね。
先ほど筆跡は「日本人に合っているもの」とおっしゃっていましたが、
具体的にはどのような部分が合っているんでしょうか?
日本人は感性が鈍くなっていると思うんです。
私の講座では、必ず書いてもらった字を遠くから見てもらい、
「この人、どんな人だと思いますか?」
とみなさんに聞きます。
「大人しそう」とか「優しそう」とか、
いろいろな意見が出ますけど、
「字だからわかりません」と言う人が時々います。
字は自分の性格や行動のアウトプットです。
考え方の癖が投影されるもの。
でも、一部の人たちは
文字は「テクニック」で書くものだと思っています。
字は目で見て覚えているような気がしていますけど、
実は手の動き、ストロークで覚えているんです。
だから、パソコンに慣れていると
読めるけど書けない字が多かったりしますよね。
自分の書いた字に自分の考えが出ることに気が付かないでいると、
自分のことを「どうでもいい」と思ってしまいがちです。
自分のことがどうでもよくなると、
相手の気持ちもどうでもよくなっちゃうんです。
そうすると誰かを傷つけても平気になってしまう。
それはつまり、感受性が鈍っている状態だと思うんです。
だから私は、下手でもいいから力強い字を書いてほしいと思います。
あとは、筆圧をつける練習をするといいですね。
筆圧は強い方がいいんですか?
筆圧が強いのは、エネルギーが余っているからです。
よく講座でやっていただくのが、
硬筆書写という10Bの鉛筆でうんと力を入れて書く練習。
「気持ちよかった」と言ってもらえますが、
それは普段、エネルギーを出せていないということでもある。
そうやって自分のエネルギーを思い切り出すことで、
感性を豊かにしてもらうことも私の目標ですね。
手で字を書く機会が少ないという実感はありますね。
これからもっとニーズが高まるかもしれないですね。
そうですね。
最近、若い男の人に草食系の字が多いように感じます。
それから、名前を大きく書くことができない人が多い。
これはすごく大事なことです。
中間管理職の人にも多いんですよ。
上と下に挟まれているから、
「僕なんかどうせ・・・」
という心理が字に出てしまう。
字は上手でなくてもいいんです。
大きくのびのび書くことが大事。
字が小さいと体力的、精神的に不安な気がします。
下手でも字が大きいと力を感じますよね。
新人研修の時に直筆の名前を見せてもらったことがあるんですが、
名前を小さく弱々しく書いていた方が
1週間後に体調を崩して会社を辞めたことがありました。
現実とつながるんですね。
自分の字って、大事なんですね。
字は自分のためだけじゃなく、
周りの人に安心感を与えるためのものでもあるんです。
私達は、手書きのものは文章を読む前に、
書かれた文字の全体の雰囲気から無意識に
相手の印象を決めていたりします。
だから、いい印象を持ってもらえたらそれだけで得なんですよ。
この差別化は印字されたものではできないことです。
そういうことを、もっと若い方や経営者の方に知ってもらいたいですね。
「自分がどうありたいかを字で表現すること」
が大切なのであって、
上手に書くことはそれほど大事じゃないんです。
日本人は自分を主張することに抵抗がある人が多いですね。
「和を以って貴しと為す」文化ですから。
だから、自分の内面を探ることも苦手です。
その点、文字は、その人の内面のアウトプットなので、
「あなたは優しいけど、時々喧嘩しているでしょ」
と字を見て言われると、自分を客観的に見て素直に
「そうなんです」と答えやすいのです。
逆に字を見ずに自分の内面を決めつけられると
「いやいや、そんなことないですよ」と言いたくなっちゃいますが。
自己表現にはさまざまな形がありますよね。
スポーツだってそうですし。それが文字という形でもできるということですね。
浅井さんなら、
自転車で動くことによって
自分のアグレッシブさやコミュニケーションを表現していますよね。
それが伝われば本当は何だっていいんですよ。
でも、文字が一番簡単でかつアピールしやすいと私は思っています。
自分を表現するものがない人は、
サインだけでもいいので手書きで書いたほうが
コミュニケーションがうまくいきますよ。
欧米人ではサインをうまく書こうと思っている人は、
一人もいないと思うんですよ。
それより個性を主張する方が大事ですよね。
サイン社会なので自分のサインだとわからないといけないですから。
習字のお手本みたいな字はきれいですごいですけど、
あまり人間味を感じません。
その人と一緒にバカ騒ぎをしたり、
おもしろい仕事をしたいとは思わないのでは?
それよりも、クセがあっても多少悪筆であったとしても
浅井さんの魅力や個性が伝わる文字で書いた方が、
読んだ人が
「何だか浅井さんは面白いことをやってくれそう」
と思ってくれます。
パソコンの印刷文字が当たり前の今だからこそ、
自分をアピールする有効な手段かもしれませんね。
では、今回のテーマである「29歳」の頃のお話に移りたいと思うのですが。
当時は、どのような想いで、どんなことをしていましたか?
29歳の頃は結婚していて、
パソコン教室を開いていたと思います。
他には企業で私自身がパソコンのインストラクターをしながら、
スタッフさんをインストラクターとして派遣するお仕事をしていました。
ちょうどWindowsが出始めた頃だったので、
これからWindowsに力を入れていなかければならない
販売代理店さん向けに通信教育をするようなお仕事をしていました。
当時は夢や目標に向かって進むというより、
お仕事をもらえることがとにかくうれしかった。
パソコンの仕事をしていれば将来困らないという雰囲気の時代ですから、
恥ずかしながらビジネスモデルを考えたことがなかったんです。
それでも仕事ができていましたから、
あっという間に歳が過ぎていましたね。
ある日思ったのは、
パソコンの仕事は私には限界があるいうことです。
やってもやっても自分のスキルにならないことに気が付きました。
私は仕事を一生していこうと思っているので、
やればやるほど自分のスキルと貫録が付く仕事がいいと思ったんですね。
ただ当時は何も思い浮かびませんでしたが。
会社をつくられたのはいつ頃ですか?
35歳の時です。
自分の好きなことをやろうと思って今の会社を作りました。
最初は経営者向けにパソコンの個別指導をしていました。
「パソコンが苦手な社長様に、じっくり・しっかり・こっそり教えます」
というキャッチコピーで展開していました。
当時はそういう仕事をしているところがめずらしかったので、
ラジオや新聞など、色々なメディアで紹介していただきました。
面白いのは、生徒さん(経営者)と膝をつきあわせてパソコンを教えていると、
だんだん社内のことがわかってくるんです。
「この社員さんは社長のことが苦手だな」
「社長はこの人のことあまり好きじゃないな」とか。
それで、社員さんがいない時に
「次にあの方が来たら、こういう言い方をするといいですよ」
と、社長にアドバイスをするようになったんです。
その後 業務を拡大するのに
スタッフを雇って進めていこうと、
担当をスタッフさんに切り替えた途端、
クモの子を散らすようにお客さんがいなくなった。
社長はパソコンを習いたいわけじゃなかったんですよね。
経営の話をしたり、社内の話をするのが楽しかったんです。
「あの新聞に載っている林さんに習っているのよ」
という自慢もしたかったはず。
パソコンのノウハウを習うことが目的ではなかったんです。
そこから少しずつ変わっていきましたね。
~~~同行サポーターからの質問ターイム~~~
上手じゃなくてもいいから丁寧に書く、ということでしたが、
丁寧でかつ印象に残る字はどういうものなんでしょうか?
履歴書を書く際のポイントとして、お聞きしたいです。
まずは、大きくのびのび書くこと。
丁寧な字は「はらい」で決まるんですよ。
「はらい」をきちんと書くことは、
「私は周りに対する目配りを忘れない人間です」
というメッセージと同じ。
「はらい」を意識して書くと、字の印象が違うでしょ?
上手・ 下手ではなく、人間の心配りの部分がどう出ているかなんですね。
丁寧に書いても「はらい」が乱暴な人がいたとしたら、
自分では一生懸命にやっているつもりでも
陰で「あいつは乱暴だ」と言われているかもしれない。
細かい部分まで意識的に気を配って書くことで、印象は変わってきますよ。
浅井さんの字もそうですけど、
優しい人は右の「はらい」が長くなる。
「左はらい」は字の途中なのであまり長く書こうとしないけれど、
「右はらい」は最終画だから書こうと思ったらいくらでも長く書けちゃうんです。
これは、気持ちを引きずるということの表れなんです。
一つの仕事を長く続けられることでもあるんですけど、
たとえば失恋したらなかなか立ち直れない人に多いんです。
なので、仕事では「右はらい」をあまり長く書かないほうがいいです。
「はらい」以外にポイントはありますか?
ほかに気を付けるとしたら、「口」という字ですね。
「口(閉空間)」は書いた人のエネルギータンクの大きさなんですよ。
「口」の字が小さいと文字全体の元気がないように見えてしまう。
逆に、「口」の部分が大きいと明るい印象に見えるんです。
そこを意識して書くと、
「僕はエネルギータンクが大きいので
多少のことではへこたれません」
とアピールできる。
あとは、ゆっくり書くことですね。
みなさん忙しいから考えて書く、という時間がない。
「美しい」という字は「Beautiful」という字なのに、
その意味を考えないで書いていますよね。
「大きい」だったら大きく書くべきなのに、小さく書く人がいたりする。
本来それはおかしいんですよ。
それが感受性なんです。
~~~同行サポーターからの質問タイム終了~~~
これから何かやりたいと思っている若い人たちに向けて、
アドバイスをお願いします。
失敗してもいいからやってみること、ですね。
失敗して痛い目を見ないと他人の気持ちもわからないし、
成功するやり方が何かもわからないじゃないですか。
やらなくて失敗したと思うよりは、やって失敗したほうが絶対いいですよ。
失敗した人にアドバイスできるかもしれませんしね。
企業で社員さんにカウンセリングをする時は、必ず
「会社は楽しいですか?」
と聞くんですが、
「嫌じゃない」と答える人が多い。
それは会社に対してとても失礼だと思うんですよ。
他人軸で生きているんです。
頼まれて会社に行っている、
という考え方なんですね。
「今日、何か新しいことをやろう」とか、
「この人の助けになることをしよう」
と思ったら、会社の売上も自分事として感じるはず。
他人軸で生きているとその達成感を感じることはできません。
それはすごくもったいないことだと思います。
どんな人でも会社に貢献できることはいっぱいあるので、
「人を喜ばせたり、楽しんでもらうことを建設的にやるトレーニング」
を少しでもやってほしいですね。
まずは動いてみることが大切だなぁと僕も思いますね。
では最後に、29歳のご自身に向けたメッセージをお願いします。
私の開運座右の銘なんです!
「かんしゃ」という言葉ですね。
そうですね。「がんばりました」って。
本日はどうもありがとうございました!