65人目 熊坂仁美さん:株式会社ソーシャルメディア研究所

会社名:株式会社ソーシャルメディア研究所
URL:http://www.socialmedialabs.jp/
公開日:2010年11月12日

今回の旅は、株式会社ソーシャルメディア研究所 熊坂仁美さんです!

初めにどんなお仕事をされているのか教えてください。

株式会社ソーシャルメディア研究所の代表をしています。
企業のソーシャルメディアのコンサルティングと教育を行っています。
ソーシャルメディアで代表的なのはTwitter(ツイッター)とFacebook(フェイスブック)ですが、
私の場合はFacebookを得意としています。
11月5日にダイヤモンド社から
「Facebookをビジネスに使う本」を出版しました。

今のお仕事をされるまでにどういったお仕事をされてきましたか?

4年制の大学を卒業してすぐに主婦になりました。
就活をせずに婚活に行ってしまったんですね。
大学を卒業したのは3月ですが、
それより一ヶ月はやい2月に結婚しました。
子供もすぐにできて、翌年にはママになっていました。
勢いで結婚を選んでしまいましたが、
実は、本当は仕事がしたかったんです。
それに気づいたのはだいぶ後でした。
一応、子供が幼稚園や学校に入ったタイミングで、
職探しをしましたけど、全然ダメでした。
職歴が全くないし、子供がいることも大きなハンデで。
どこも空振りなので英語の勉強をして資格を取ることにしました。
それなら家の中でもできますので、子育ての合間に勉強していました。

今は女性も仕事に目を向ける方が多いですけど、
当時の女性が仕事に目を向けることは異端だったんですか?

異端ではないですけど、まだ少ないですね。
私の同級生も2~3年勤めて結婚するパターンが多かったです。
29歳の頃というと、主婦業をバリバリやっていましたね。
子供のお受験に夢中。
小学校受験の「お受験ママ」まっしくらでした。

29歳のときから30歳に切り替わるときに焦りや不安はなかったですか?

それを考えている暇がないくらい集中していましたね。
たぶん男性も女性もその時代は、
一番エネルギーが出る年代だと思うんです。
ある程度経験も積んで、世の中もわかってきているし、
一番ノッているときに子供のお受験をやっていたわけです。

そんな忙しい時期を過ごされていたんですね。
そこから今の起業の道へ進んでいったんですか?

子供が大きくなってくると
こっちもどんどん歳を取っていきますよね。
勤めるという意味では、
ますます条件が悪くなっていきます。
またトライしたんですけど、
どこも雇ってくれないわけです。
生活は安定して恵まれていたんですけど、
悶々として心が満たされないような…。
30代後半から40代前半が一番苦しかったと思いますね。
仕事を始めたのが42歳なので、
それまではものすごく苦しかったです。
そして、バツイチになり、「もうこれは!」と思って仕事を探し始めたんですね。
それでもどこも雇ってくれない…。
途方にくれて本屋さんで就職本を買いに行って、
ふと見たら外国人向けのフリーペーパーが置いてあったんです。
それをもらって家で見ていたらアルバイトの募集が。
それが不動産だったんです。
外国人向けの不動産の案内と営業。
来た人に賃貸を案内するカウンター営業。
エリアは麻布でそこは庭みたいなものでしたし、
車の運転と英語もそれなりにできるので雇ってくれました。
時給1000円のアルバイトからのスタートでした。
あとで雇い主に
「なぜ採用してくださったのですか?」
と聞いたんですよ。
その理由は、意外なことでした。
そのとき、履歴書を紙ではなく、
Excelでメールで送れという指示だったんですね。
それがITリテラシーの試験だったようです。
私の場合は、写真もアップロードしましたので、点数が高かったようです(笑)

不動産のお仕事はどのくらいされたのですか?

3か月でした。
時給1000円で残業も不可、契約してもコミッションもなかったので、
フルに働いても15万円以下しかもらえない。
それでは子供は育てられないので、
同じく不動産で正社員を募集している会社を受けて正社員になりました。

不動産会社でずっと安泰だという気持ちにはならなかったんですか?

もっと営業のスキルを磨こうと思ったんです。
それまでセミナーに参加したことがなかったんですけど、
和田裕美さんの営業のセミナーが目的で「女性起業塾」に行きました。
セミナーの最後に起業プランのプレゼンがあったのですが、
みなさん、すばらしいプレゼンをPowerPointで作成しているのに、
私はPowerPointを使えなかったので、
Wordで作ったプレゼンに
「私は起業しません」
と書きました。
ただそのときの課題でブログ(楽天ブログ)を始めました。
2004年だったので、当時としては早かったですね。

その頃、楽天ブログは流行っていましたよね。

今のアメブロみたいな感じですね。
昔から文章を書くのが好きだったので、
ブログを書くことは得意だったんです。
まさかあとになって文章で食べるようになるとは思いませんでしたが。
ブログを通してインターネットのマーケティングにものすごく興味が出てきました。
自分でセミナーをやってみたら集客もできましたし。
その後、女性のマーケティングに強いトレンダーズに入り、
そこでもイベント集客のメールマガジンを担当して企画をしていました。
ネットを使って人を集めることに興味があったので、
何も知らなかったんですが、
ありがたいことに、周りに教えてくる人がたくさんいたので、
どんどんスキルアップしていきました。

ちょうどいい時期にブームに乗れたんですね。
それから会社を?

会社を作ったのは勢いです(笑)
確固たるビジネスプランもなく「やっちまえ」という感じで。
今思えば、本当に無謀としか言いようがないノリだったんですよ。

行き詰った時期はありましたか?

何度もありますよ。
でも何で乗り切ってきたんでしょうかね?
私もよく覚えていないんですけど、
元から情報収集が得意だったんです。
ある企業に常駐のような形でWeb周りのお手伝いをしていたんですね。
ですが何も仕事がなくなって、
「もっと売上を上げるにはどうしたらいいかな」
「どんなコンテンツがいいんだろう」
と思っていたら、お客様インタビューに出会ったんですね。
それを専門にやっている人に弟子入りのような形をとって始めました。
やりはじめて、これはおもしろいと。
今までやってきたことが全部活かされる仕事だと思ったんですね。
ライティングもそうですし、
ビジネス知識もある程度はわかりますし。

収益を出すまで大変じゃないですか?

大変でしたがそんなに長くはかからなかったんですね。
ただものすごく集中してやりましたね。
1週間、ほぼ毎日取材したこともありましたね。
インタビューは1時間~1時間半で終わってしまうんですけど、
それをまとめるのがとても大変なんですよ。
辛い部分もありましたが、
やっていて楽しかったですね。
ビジネスの内容に興味があったんです。
ITや不動産などのいろいろな業態を見るわけです。
その仕事でいろんな業態のデータベースを増やしていったんです。
それが今に生きています。
新しいお客様が来ても
「この業界はこういう業態だ、力関係はこうだ、代理店がいて・・・」
というのが全部わかるんです。

今までサラリーマンの仕事をしていないにもかかわらず、
一気に吸収できるわけですね。

ものすごく吸収しましたね。
集中してやったのは1年くらいですけど。
あれは1つのステップだったんだと思いますね。

今後のビジネス目標はありますか?

これから、日本にソーシャルメディアを広めたいと思っています。
今後ソーシャルメディアの時代になってくるのは間違いないですが、
まだまだ情報が少なくて、どうしていいかわからない人が多い。
そこで、道案内をするのが私の役割だと思います。
ソーシャルメディアをうまく使っている人は
Twitterや動画などを上手に使っているんですね。
日本の場合はTwitterだけが突出しています。
Twitterユーザーが多くて人口比では世界一なんです。
アメリカを超えているんです。
ところがアメリカではTwitterよりもFacebookの人口のほうが多いんです。
私が始めた今年の1月の時点でほとんど誰も知らなかった状態でした。
アカウント取って入ってみましたが、
正直「むずかしい」と思いましたね。
mixiと比べると使いにくいんですよ。
でもやっているうちにおもしろいと思い、
ビジネスページ(ファンページ)を作り始めたんですよ。
そしたらどんどんファンが集まってくるんですよね。
海外の事例を研究しながら、自分でも実際にFacebookを研究して。
そして、おそらく日本で初めてのFacebookセミナーを5月に開いたんです。
セミナーの評判もよくて、おかげで出版ということになりました。

僕もアカウントを持っているんですけど、
ほぼ放置しています。
今後はFacebookやTwitter、ブログも連動したほうがいいんですか?

人に言っておきながら私もやっとブログを更新したんですけど、
いろいろあると全部をやるのは難しいですよね。
だけど、うまく使いこなしている人を見ると全部やっているんですね。
網羅するのも大事な条件です。

TwitterやFacebookにmixi、YOU TUBE 、
USTREAMを全部網羅する人が成功していくと思われますか?

一概に成功するとはいえなくて、1つの条件です。
ブログだけだったらブログ、TwitterならTwitterの周りしか認知度がない。
でもFacebookやTwitter、ブログをすると
全体の輪が大きくなります。
全部やるのは認知度を高める上でとても大事なことなんですね。
ソーシャルメディアは認知度を高めるものですから、
全部やるのがポイントです。

ソーシャルメディアに着目されるのはすごいことですよね。
主婦業をやっていた方が最先端に行くことが、
僕の中ではものすごく画期的で勇気を与えられますね。
主婦をやりながら悩んでいる人や自己実現ができなくて苦しんでいる人が
僕の周りにいるんです。
そういった人たちに対して何をしたらいいかアドバイスはありますか?

あきらめないことです。
絶対にあきらめちゃダメです!
今の時代は昔と違ってインターネットがあるから何とでもなります。
どこでも仕事ができるから、何をやるかですね。
その何をやるかを突き詰めて考えていかないとダメですね。
私もそうだったんですけど、
「仕事する=勤める」
になっちゃうんです。
今思えば自信がなかったんですけど、
自分で仕事を作り出そうとしなかった。
仕事というのは作り出すことなので、
需要があれば仕事は存在するわけだから、需要を探すことですね。

困っているものを探して見つけ出していくんですね。

仕事とは誰かからお給料をもらうことじゃないと思います。
世の中に足りないものを埋めること。
足りなければ足りないほど高いお金で仕事をやれるわけです。
かくいう私も当時は気づきませんでした。
「仕事は勤めるもの」
だという固定観念を持っていましたから、
勤めたいのにダメだと言われて、
堂々巡りになってどうしていいのかわからない。
今の自分から見ればその頃は単に袋の中に入っていたと思います。
その袋を破って出ればいいだけの話しなのに。
自分自身の可能性を甘く見ているし、
低く見ている人が多いと思います。
それが全ての原因ではないでしょうか。
もっと自分自身を評価しなさい!と言いたいですね。

これからの時代はソーシャルメディアも流行っているので、
自分自身をプロデュースしていくのも可能。
だから雇用形態も激変していくと思っています。
そうした時代では路頭に迷う人も出てくると思うんですよね。
そういう人たちがどうやったら時代に取り残されずに
うまく自分をプロデュースしていけるのか。
その人たちを解決してあげることがひとつの仕事にもなるのかなと思っています。

人間って基本的に想像力がないので
先輩をたくさん見ることですね。
いいも悪いも例を見れば、自分はどうありたいのか、
どういう考え方で生きていきたいのか、わかってくると思います。

~~~同行サポーターからの質問ターイム~~~
今までバンドをやっていたり、世界一周をしたり
好きなことばかりやっていたんです。
世界一周から帰ってきたら起業しようと。
おもしろそうだと漠然に思っていたのですが、
何で起業するのかがわからなくなってしまって。

そのパターンは多いですね。
今はそんなに起業ブームじゃないですよね。
私のときは起業ブームだったんですよ。
女性起業家の全盛時代。
ものすごい起業ブームで、
私もその波に乗ったミーハーなんですけど、
そのときは起業することが目的になっていました。
何をやろうかとは思っていなかった。
ただ起業するなら自分にしかできない、
社会にとって足りないものを提供することが大事じゃないですかね。
自分が起業したことによって大げさに言えば、
大小はあるにしろ社会がこう変わったという風にしないと意味がないと思うんですよ。

それは今までの経験から考えるんですか?

経験も大事ですが、
経験プラス何が求められているかという合致ポイントじゃないでしょうか。
以前は何をしていたのですか?

今29歳なんですが、
大学を卒業してからずっとバンドをやっていまして、
バンドでプロを目指していたんです。
その間はアルバイトをしていました。
バンドを辞めてから1年間お金を貯めて世界一周をして、
この間帰ってきてから何もしていません。

お金はどうするんですか?

この間まで失業保険に入っていました。
今は就活しているところです。

でも世界一周をしたならきっと何か見えたんじゃないですか?

日本に帰ってくると成功したい、あれが欲しいと考えちゃうんですが、
お金や仕事がなくても幸せに暮らしている人がいっぱいいるんですよね。

じゃあ海外の好きな国に住むのも1つじゃないかな。
若いし、しがらみもなさそうだから。
別に日本に限ることはないんじゃないですか?
たとえば、Facebookは世界とつながっているんですよ。
世界で5億人いますから。
どう考えても日本のマーケットより世界のマーケットが大きいです。
お金は世界でつながっているわけですから、
日本の景気が悪いなら景気のいい国から
お金を取ってくればいいだけの話です。
Facebookはどこにいても世界と取引ができるんです。
Facebookの日本人ユーザーはまだ少ないんですね。
逆に海外は5億人もいる。
じゃあ、やっぱり海外かなって。
日本の会社である特殊な技術を持っているんですけど、
その会社の海外のFacebookサイトを作っているんですが、
おもしろいですよ、どんどん人が集まる!
アメリカもそうですけどインドネシアの反応がものすごくいいですね。

なるほど。ありがとうございます。
~~~同行サポーターからの質問タイム終了~~~
最後に皆さんにお願いしているんですけど、
29歳の自分に向けたメッセージを書いてもらえますでしょうか。

考える
ということですね。
最近やっと、ちゃんとモノを考えられるようになったんです。
これまで、論理的に考えたりじっくり考えたりする習慣がありませんでした。
反射的にやることは得意でしたけど。

当時もっと考えておけばよかったと?

頭を使っているようで使っていなかったなと。

考えないといけないですね。
僕も思いつきで動いているところがいっぱいあるので。

思いつきの部分も大事なんですけど、
私みたいに直感型の人間はもっと考えないといけないですね。

本日はありがとうございました!