73人目 臼井由妃さん:有限会社ドクターユキオフィス

会社名:有限会社ドクターユキオフィス
URL:http://ameblo.jp/dr-yuki/
公開日:2010年12月14日


今回の旅は、有限会社ドクターユキオフィスの臼井由妃さんです!

まずは自己紹介をお願いします。

皆様が紹介して下さる時には
経営者、ビジネス作家、講演家と呼んで頂いております。
そのうち8割が著作で1割が講演。
実は経営者の部分は1割程度なんですよ。

経営者になった経緯は?

女性の厄年である33歳で結婚をして、
嫁いだ方が経営者でした。
歳が離れている方でしたから、
仕事を継ぐのではなく、専業主婦のつもりでいたんですね。
結婚して3~4か月経ってから、
主人が重い病に冒されていて、
実務ができないことがわかったの。
治る見込みのない病気で告知することもできない。
主人も入院してすぐに戻ってくるつもりだったのですが……。
「僕がいない間だけ仕事をやっていてくれ」
って。
それがきっかけなんですよ。
主人は、末期の癌でしたが、
民間療法や漢方療法などいいといわれるものは
全てやって、それから10年以上頑張って生きてくれたんです。
ただ、私と主人の結婚生活は病院と家の往復。
あまり夫婦という感じではなかったかな。
借金もあったし、返したと思ったら、
また次の借金が出てきたり。
人はよく私のことを
「よくそれだけの困難なことを」
と言いますけど、
私自身、そんなに大変だったとは思っていませんからね。

プレッシャーを感じたりは?

思っていなかった。
これからもっと辛いことがあるかもしれないけど、
乗り越えられないものはないと思っています。

その価値観は幼い頃からあったんですか?

とんでもないですよ。
本にも一部書いてありますけど、
子供の頃は吃音症が原因で
登校拒否になったこともあります。
内に籠るタイプでしたね。
内に籠っても闘志を秘めるんじゃないんですよ。
モチベーションやヤル気がまったくなかった。

夢があったわけじゃないんですよね。

私たちの世代って、
人前で夢を語ることをしない世代なんですね。
私みたいに夢がなくても不思議ではないし、
人に話すものでもないと思っていたから。

昔は大変でしたが、
現在は講演会をしたり本も書かれています。
何かご自身が変わられたきっかけがあったんですか?

誰でも「人生は一度きりだ」とおっしゃると思うんですね。
でも、その言葉を本当に噛み締めているのかなって。
「そうだよね、一度きりだよね」
と感じる程度かもしれない。
たとえ、生まれ変わるとしても、
その変わった自分には会えないわけだから。
そうすると、苦労も楽しいこともさらに楽しむようになる。
小さい時から吃音症やいじめとかで
嫌なことばかり味わっていると、
これより嫌なことは起きないって思うしかないんですよ。
結婚をして今よりも幸せになれると思ったけど、
世間的に見たら不幸っぽいじゃないですか。
今日より明日がいいと思ったら辛いことはないですし、
実際に今日より明日のほうが絶対にいいんですよ。
経験という財産が生まれる分だけね。
だから何が起きても平気。

その考え方で乗り越えていけるわけですね。

不幸を味わなくて済むならそのほうがいいですよ。
ただ、不幸な場面に遭ってしまったら、
こう考えたらいいと思うんですよ。
「自分は選ばれた人間だ」
不幸に選ばれることも必要なんですよ。
これはすごく驕った考え方ですけど、
人間として価値のある人じゃなかったら、
神様は不幸を与えないと思っているんですね。
価値があるからその人は不幸を乗り越えられるわけ。
逆に価値のない人には不幸なんて与えない。
不幸を受けちゃう人は選ばれた人間なので、
自分はすごい人だと思ってほしいですね。

その考え方はすばらしいですね。

ただね すごいと思っているだけで、
何もしなかったら終わりですよ。
乗り越えなくてはいけないことを
しっかり考えなくてはいけませんね。

今までの経験の中で、
最大のピンチだったと思うものはありましたか?

大事なことを言い忘れましたけど、
人間って過去のことを辛いことでも美化してしまうんですよ。
そこを割り引いて考えないといけない。
実際はもっと辛かったと思いますよ。
私が一番辛いと思ったのは6年くらい前。
主人は脳溢血にもなって、
手足が動かなくて声も出せなくなった。
目の動きで察するしかないの。
人に会いたくない。……とずっと言っていたし、
私以外の人間とは絶対に会わないことを最初から決めていたんですよ。
「絶対に息子にも会わせないでほしい」
と言われました。
自分のみっともない姿を見せたくないという男の美学があった人だから。
でも、それは世間では受け入れられないことでしょう。

息子さんが会いたくても会えないんですよね。

本人の意志ですけど、
私がどういう言われ方をするかはわかりますよね。
でも、主人の意志だから。
亡くなる1年前にこの状態のことを
誰にも話さないでくれって。
「君も僕の最期の死に目に会えなかったとしても、絶対に仕事は休むな」
と昔から言われているので、
普通に働いていたわけですよ。
主人は明日死ぬかもしれないのに
肉親には会わせないでしょう。
私は出張で講演が多いから日帰りじゃない場合もある。
で、病室に電話をかけるけど、
主人は声を出せないから、
私の声だけを聞くことを1年間くらい繰り返したわけ。
今から振り返ればいい思い出なんだけどね。
私自身辛かったのは、
みんなに元気や勇気を与える講演をしなくちゃいけないわけ。
その私が会場にいる中で一番辛いんですよ。
笑顔でいなくてはいけない。
でも、それは求められていることだから。
私の不幸なんて人は必要ないから、
笑顔を完璧に演じて、
見破られないようにすることが辛かったですね。

その影を一瞬でも見せちゃいけないですよね。

お金を払って時間をかけて来る人に失礼ですからね。
実はその頃、うつ病になっちゃったんですよ。
でも、うつを出すことはできないでしょう。
おまけに髪の毛も抜けるから、
当時はカツラを被っていましたよ。
カツラを被りながら、
笑顔でパワーあふれる講演をしていましたね。
完璧に演じていたと思う。
今から振り返ればそれが一番辛かった。
主人が亡くなった後に友達に実はこうだったと話した。
「何であなたは言ってくれなかったの?」
って。
言ったところでどうにもならないよね。

プロ根性ですね。

よく本にサインをする時に
「一日一生」
と書くのは、
私も覚悟を決めて仕事をして、
時間を使っているんですね。
変なことをすれば人の人生も奪うと思っているから。
あと自分で思っているのは、
「起きることすべて人生のネタだ」
と。いいことも悪いこともね。

では29歳の1年間を振り返っていただきたいのですが、
29歳はどんな年でしたか?

覚えていないというか何もないですね。
33歳は結婚をした歳だから覚えているわけですよ。
単純に29歳から30歳になっただけ。
それは自分の背景にもよるの。
29歳の時もまともに勤めていないから。
目標があって生きてきたものがないから、
ただ毎日送っていたんじゃないかな。

ちなみに今の夢は?

100歳まで現役で仕事をすることです。
その現役というのはどんなことでもいい。
仕事でお金を稼ぐって意味ですよ。
お金じゃなくても相手から愛や思いやりを
もらえる形でもいいと思っている。
社会と関わって最低100歳まで仕事をしていきたい。
それが夢なんだから、
夢で終わらせないためにどうするかというと、
身体が悪かったら到底ムリでしょう。
だから、ちゃんと身体を鍛えていますね。
他には若い子たちと話をした時に
その子たちとなるべく近い目線で話をしています。
彼らが考えていることや思っていることを
吸収しないと頭がどんどん古くなっていく。
そういう面でも鍛えていますよ。

以前、若い子たちの目線に立って
「大人にやられて嫌なことをやらない」
とおっしゃったことが印象的でした。

お説教の口調って、
「~しなさいよ、~するんだよ」
という上から目線でしょ。
その口調は私自身の心にも蓋をしちゃう気がするので、
「こういう風にしたらどう?もしかしたらできるかもしれないよ」
と問いかけてみる。
ただ、甘やかすだけなら若い子もつけ上がってしまう。
それは若さゆえにあること。
だから、お説教じゃないけど、
叱ることもしなくてはいけない。
そのバランスを考えてやるのは
自分にとっても必要だと思うんですね。
私も20代から30代の時に
今の自分と同じくらいの歳の人に説教されたら、
腹が立ちましたよ。
だから、同じことをしたくない。
みんな嫌な思いがあるのに
歳を取ると説教しちゃうんだよね。
あとは私よりも歳下の45歳の人がいたとしましょう。
言い方は悪いんですけど、
客観的に見ても私のほうが社会に貢献しているとします。
貢献にはいろんな意味があって、
税金を納めているとかボランティアをしているとかね。
そういった比較対象があったとして、
45歳の人のほうが数段偉そうなことを話す時もある。
そういう時には「若いな、かわいそうだな」と思います。
イキがってみても、すぐに底が見えてしまう。
本物の大人には分りますから。

かわいそう?

例えば、起業して1年目からうまくいく人もいますよね。
「それで一生終わると思うなよ、君」って言いたいわけです。
でも、それはお説教じゃない。
自分より若くて鼻っ柱の強い人を見ていると、
「若いな、かわいいな」とも思うけど、
「そのままじゃ、人生終わらないよ」と心の中で感じている。
そういう人は優しく言ってもわからないもん。
素直な人じゃないから。
そりゃあ、一回目だったら許しますよ。
たまたまかもしれませんから。
二回目は我慢するかな。
三回目も同じ態度だったら言いますね。
私は普段言わないけど、
態度が顕著にひどい人にはびっくりしてしまう。

過去にはいらしたんですね。

いましたよ。
もちろん、罵倒はしないけど、
決め台詞はあります。
「あなたのような生き方をしたら畳の上で死ねないよ」
それは人としてあるまじき行為だから。
それくらいしか言いませんよ。

臼井さんはテレビ番組の
「マネーの虎」の印象が強いので、
怖いイメージの印象を持っている方もいると思うんですよね。

全然違うんですけどね。

僕も初めてお会いした時に
とても優しい方なんだなって思いました。
ほんわかした印象でした。

今はおもしろいんですよ。
大学生の世代の人は、
「マネーの虎」を知らない人も多いから、
たまに記事に「臼井は怖くないんですよ」ってふざけて書くと、
私の本やブログで私を知ってくださった人は、
「どこが怖いんですか?」とメッセージが来ちゃう。

受け取り方が違うんですね。

何で怖いのかよくわかりませんって。
両極端ですね。
私が思うに人は歳相応に変化していかないといけないんですね。
ムリに変えるのではなくて。
「1日1ミリの進歩でいいから今日より明日、明日より明後日」
とよく話す台詞があります。
みなさんが私と同じ歳になった時に
世の中がどうなっているかはわからない。
29歳の頃はあまり考えなかったけど、
私にとっては50歳を過ぎてから考えることがいっぱいあった。
100歳まで生きるから50歳は折り返し地点です。
だから、すっごく考えたの!
最初の50年間のうちの25年くらいはダラダラしてきたから、
それをいかに後半で取り戻そうかって考えたり。
そうは言っても、
しゃかりきになってみんなを巻き込んで、
うるさいお婆さんで100歳にはなりたくない。
穏やかに柔らかくて、
ムリなく暮らしていける方法ならいいな。

~~~同行サポーターからの質問ターイム~~~
ブログやTwitterの他にも執筆活動をされていますけど、
文章を書く際に気をつけていることはありますか?

文章はその人自身を表わすものだと思っています。
素敵な文章を書いている人の真似をするのはいいけど、
真似て書いたところでしっくりこなかったら、
自分自身を表わしていないので、
まず自分の気持ちを正直に書くことが必要だと思います。
例えば、「一生懸命がんばろう」が口癖だったとします。
私にとっては、張り切ってやろうが自分のテイストなんですよ。
「一生懸命がんばろう」と書いたら何だか気持ち悪い。

文章の魅力とは?
文章を書くのが楽しいから、
執筆活動をされているのだと思っているのですが。

楽しいのとはちょっと違いますね。
もちろん、楽しくなかったらできません。
エゴはあったらいけないと思います。
人間は利己的な生き物だから、
決して悪いことではないですけどね。
「私はこれだけのことを知っているから、君たちに教えてあげよう」
この考えはいけないと思っている。
「私はこんな経験をして知識を蓄積してきました。
それがみなさまのお役に立てると思います」
文章はお伺いを立てるものだと思っています。
お伺いを立てても受け入れられないこともありますよ。
受け入れられない評価が返ってくると、
書いていてもすごく辛い。
ただ、書いている時の自分は一番素直だと思う。
私は自分の気持ちをカッコつけて書くことはほとんどない。
もちろん、言葉は選びますよ。
カッコつけて書くことをしていないだけです。
書いている時はそれこそママチャリで走っているものじゃない。

今、僕は学生なんです。
学生の時にこれをやっておいてよかったというものはありますか?

私は短大卒なんですね。
大学生や院生になったのは、
経営者になってからです。
今だからわかることなんですけど、
学生時代は何を勉強しても自由だと思いますよ。
とにかくやりたいことを自由にやっても、
大人から批判されても
若くて許されるのが大学時代だと。
社会人になったらそれは許されないから。
とことん遊ぶなら遊んで、
自分で責任の取れる範囲でやったほうがいい。
自分はこれしかできないって思わないこと。
もし、自分が20歳に戻れるとしたら、
もっともっと本を読んでおけばよかったと思いますね。

小説ですか?

小説は読みません。
社会に出ると学べることはたくさんあるんですね。
人の話を聞くことでも学べますが、
話を聞く人の元へ行かなくては学べないでしょう。
でも本は本屋さんやAmazonで買えば、
自分の都合で読めるじゃない。
今日は10ページ読んだり、一気に読むこともできますよね。
自分の都合で勉強できるのは本くらいしかないんですよ。
DVDでもいいと思うかもしれないけど、
映像は頭に入るようでスーッと流れるだけ。
文字も電子書籍じゃないほうがいいですね。
本を読んで気になる所を書きこむの。
好きな言葉を書くことによって、
自分の中に知識が体系的に入ってくるから。
もし、憧れの人がいるなら、
その人の本をザーッと読んでください。
絶対に誇張があるからね。
その文章に書いてある嘘や本当を見極める
ツッコミのようなものを入れてみたらいいと思いますよ。
小説はエンターテイメントだから、
遊びで読むにはいいけど、
小説を読んでも何の勉強にもならない。
表現の勉強にはなるかもしれませんが。

ありがとうございます!
~~~同行サポーターからの質問タイム終了~~~
では当時29歳の自分に向けたメッセージをお願いします。

人間って中途半端に泣くと立ち直れないんですよ。
ある程度泣くと笑っちゃうんですよ、次の瞬間。
「なに泣いているんだろう、バカみたい」
って。泣いている時間がもったいないと思えるから。
メソメソして中途半端な人はそれがないんですよ。

今日はどうもありがとうございました!