74人目 平野豊宏さん:ハガレックス・ジャパン

会社名:有限会社ハガレックス・ジャパン
URL:http://www.hagalex.jp/
公開日:2010年12月18日


今回の旅は、有限会社ハガレックス・ジャパンの平野豊宏さんです!

初めにお仕事のご紹介をお願いします。

「ハガレックス」という絵の具の製造販売をしています。
他には「ハガレックス」を使ったイベントの企画立案と
アーティストさんの支援を行っています。
人の才能を引き出すことと可能性を広げることがベースかな。
今までにない会社のあり方。
遊んでいるんだけど普通の会社よりも
圧倒的な利益を出しているイメージだね。
大人が本気で遊ぶと仕事になるということを実現している会社にしていきたい。

今の会社を立ち上げる前は、
どのようなお仕事をしていましたか?

「まちおこし」の仕事をずっとしていました。
当時の農林水産省が中山間地域という人口3000人以下の小さな町や村に
「経済効果を上げなさい」って、4億円の予算を全国にばら撒き始めたんです。
その4億円を役場は何に使ったかというと、
サービス業をやり始めたわけ。
温泉施設や旅館、ホテル、レストラン、直売所を作ったり。
役場にはサービス業のノウハウがないから作っておしまい。
住んでいる人たちからしてみたら、
「何であんなムダなものに使うんだ!」
となるよね。
経済効果を上げるどころか毎月赤字が増えていく。
そこで、農林省は補助金を使うにあたって、
「ビジョンを作りなさい」
と指導しました。
「5年後、10年後、この村が『どうあるべきか』というビジョンを
作るのにまず1年間かけなさい。
それは役場が作るのではなくて、住民を巻き込んで一緒に作りなさい。
そのビジョンを作る専門家を派遣します」
その専門家として、俺は北海道と九州を担当したんです。

地域の人とお話をしてビジョンを考えたのですか?

もちろん。農林省の予算だから、
農家のおじいちゃん、おばあちゃんが対象だから
横文字なんてわからないわけ。
マーケティングという言葉を知らないおじいちゃん、おばあちゃんたちに、
横文字を一切使わずに小学校5年生でもわかるような会議の進め方をしていった。
手法は地域にある資源をうまく活用すること。
今ある資源の中に宝物がいっぱいあるんだけど、
住んでいる人は当たり前になっているからそれが全然見えない。
よそ者からすると珍しい物がいっぱいあるのに。
それを販売していくことにした。
地域にあるものって自然資源しかないから、
都会の人たちが自然の中でする遊びを体験プログラムにして、
観光客を増やすことをしていたんです。
今こうしている間にも、
日本の伝統工芸はどんどんなくなっている。
伝統文化やその地域独特のお祭りとかが。
若い人たちが都会に出て行って、
おじいちゃん、おばあちゃんしかいない集落は、
土地も田んぼも荒れて雑木林になっている。
地域を活性化させる仕事をしていたから、
その実態を目の当たりにしてすごいショックだった。
日本の宝を残していくためには
生活できる状態まで持っていかないといけない。
もう国内だけではいっぱいいっぱいになっているから、
日本の文化を海外にどんどん出していこうと。
それを2000年くらいに思い、始めたんだ。
2002年に日韓ワールドカップが開催されるから、
世界中からサポーターが集まってくるので、
海外へ進出するのに大きなチャンスとなる。
とりあえず、「日本発、世界初」というテーマを決めて、
ものづくりすることを決めたんだよ。
コンサルをしてわかったのは、
仕事が増えると同時に自由な時間もなくなってしまう。
単価を上げればいいんだけど、
それには自分を売り込まないといけない。
ただ、メディアに取材されて自分の価値を上げていくことも大変だし・・・。
俺の特性はサポーターだから、
がんばっている人たちのサポートをするとモチベーションが上がるんだよ。
マーケティングやデザイン、アートは好きだけど、
日常の生活に追われるような仕事は感性を鈍くしてしまう。
「4年に1回だけ仕事をして3年遊ぶ仕事はないだろうか?」
と考えてみたんだ。
ワールドカップで3年間分の給料を稼いだらいいわけでしょ。

それは最高ですね!

ワールドカップの消耗グッズがいいんじゃないかと。
そして、目を付けたのがフェイスペイント。
今までのフェイスペイントは水性と油性しかなかったんだよ。
水性は汗で落ちるし、油性は落とすのが大変で
両方とも水を使わないと落とせない。
だったら、水を使わずに落とせて、
環境にも優しいフェイスペイントが便利でいいよね。
そのコンセプトで作ったのが
「天然ラテックス」というゴムの木の樹液に色を入れたフェイスペイント。
ゴム自体が天然素材だから土に戻るわけだよ。
絵の具が乾くとゴムになるんだよ。
3分くらいで乾いて、乾いたらピローンとはがれる。
はがれるラテックスだから、
「ハガレックス」という商品名にしたんだ。

今までこういう商品はなかったんですね。

世界初の商品だから、12か国からオファーが来ている。
来年はいよいよ本格的に海外進出を目指そうと思っている。
腕にするとブレスレットができたり、
指にすると指輪になったり、
塗り絵をしながらエコバッグを作るワークショップを小学校でやったりとかね。
いろんな使い方をみんなで考える想像力や表現力を引き出す絵の具。
俺はずっと教育を意識していて、
人の可能性を広げたり、人の才能を引き出すことを
自分の得意分野だと思っている。
教え育てるという教育ではない。
人間が持っている才能を引き出していく、
「エデュケーション(教育)」をすごくやりたい。
「ハガレックス」を売るというよりも、
それを使うことによって、人の才能をどう引き出していくか?
俺としては想像力や表現力を豊かにしていく事業をやっているよ。

一つのツールとしてあるわけですね。

目に見えるものがあるとすごくわかりやすいし、
今までになかったものを作っているから、
ブランディング的にもおもしろい。
海外からオファーも来ているしね。

来年くらいから一気に広まりそうなんですか?

まず足場を固めようと思っている。
一つは日本に来ている海外の留学生たちと
「海外進出チーム」を作ろうと考えている。
日本文化に興味があり、かつ日本の物を自国に持ち帰って
起業したいと考えている、事業意欲の高い留学生のメンバーと交流しようと。
そして、自国で「ハガレックス」の支社長になってもらえたらって。
もう一つは、若い人たちの中には
住んでみたい国や行ってみたい国があると思うんだけど、
「住みたい国に会社を創って、行きたい国に仕事を創る」
というテーマで国際交流をやっていきたい。
俺自身、いろんな国を見ていないから、
国ごとのエデュケーションのあり方に触れてみたいと思っている。
やりたいことがあってもできないことが多いじゃん。
だから、生活していくベースを作らないといけないよね。
「ハガレックス」は一度回り始めると何もしなくてもお金が入ってくるから、
コンサルとかの受注ビジネスとは違うスキームになったね。

狙ってできるものではないと思います。

人生そのものがツイているよ。
ラテックス業界の何が大変だったかというと、
においを消すことが大変だった。
鼻が曲がるほどクサいにおいを消すことができたら、
いろんな使い方が広がるので、業界のみんながこぞって研究していた。
たまたま、俺といろいろなやり取りしている担当者が大きなミスを犯したの。
信じられないようなミスを犯すんだけど、
そのミスがヒントになって、においが消えてしまった。

ミスから始まった?
とことんツイているんですね(笑)

ミスから始まっているから選ばれたんだろうね。

お話は変わりますが、
29歳以前は何をされていたんですか?

大学生の時に4つ会社を興していた。
めちゃくちゃ天狗になっていたな。

具体的にはどんな会社を?

1社目が学生向けのフリーペーパー。
フリーペーパーの内容は「コンパコントロールセンター」。
学生の頭の中の9割はエロでしょ。
「○○大学の茶道部の女の子5人とコンパしたい」
と具体的にオファーが来るのよ。
で、各大学のサークルの代表と連絡を取って、
一次会に関しては「コンパコントロールセンター」が
セッティングする店でコンパをやってもらう。
そのお店はフリーペーパーの広告主でもある。
そして、お店にコンパをする人を送り込んで、
スタッフの対応や料理のおいしさ、店の雰囲気、要望を書いてもらって、
それをレポートにしてお店に提出し、売上の10%をバックしてもらう。
普通にバイトするよりも稼いでいたし、
福岡中のサークルリーダーとも友達になっていたね。
そうこうしていくうちに、
緊急のバイトを探している話も入るようになってきた。
通常は時給が800円なのに緊急だから1200円となる。
緊急料金がビジネスになることがわかったわけ。
ただ、労働省の認可を取っていないから、ビジネスをすることができない。
そこで、認可を取っている休眠会社を探して、
その会社の名前を借りて始めたのが2社目の人材派遣の会社。
3社目は学生の飲食店。
閑古鳥のお店があって、
「そのお店を流行らせてほしい」というオファーだった。
そんなことをしていると、
企業から学生に何か物を浸透させるには
「平野に話を持っていたらいいよ」
と認知されるようになっていったんだよ。

企業からどんな話が来たのですか?

「ポケットベルを学生に浸透させてほしい」って依頼があったり、
学生の視聴率を上げるためのテレビ番組を作ってほしいとか、
メディア関係の仕事のオファーがたくさん来た。
電通や博報堂の会社を蹴落としていろんな広告をどんどん取っていった。
そして、最後にやった事業が大失敗だった。
情報通信会社で30億円くらいの借金を背負った。
共同出資で俺は4000万円の借金で話を持ちかけてきた学生は4億円。

具体的にどのような情報通信会社だったんですか?

ダイヤルQ2。
それを日本に持ち込んだ学生が真田哲弥。
KLab株式会社の社長だよ。
Iモードを開発したチームの一人でもある。

4000万円という借金って簡単に返せないわけですよね。
どういうアクションを起こされたのですか?

俺が4000万の借金を背負ってしょげていた時に
真田は笑いながら、「ピンチはチャンスやでー」と言ってるんだよ。
俺の10倍の借金を抱えた奴だよ!
「この前、みんなに土下座をしてまわった。
その時に俺の知恵を活かしてくれると、この借金を早く返せるから、
今、困っていることを教えてほしいとみんなに話した。
そうしたら、1か月で借金が1億円消えた」
そんなこと平気でしてるから「こいつ、すげー!」と思ったね。
俺も教わった通りに土下座をしていくと、
その姿を見たある社長が4000万円の借金を肩代わりしてくれた。
ただし、条件が出された。
それは出家することだった。
27歳から30歳の3年間、佐賀県でお坊さんをしていた。
29歳はちょうど出家の真っ最中。

29歳の出家中はどんなお気持ちでしたか?

出家といってもめちゃくちゃ楽しんでいたよ。
何をしていたかというと、毎朝の勤行、お寺の掃除。
檀家さん向けの心理学講座、子供野球教室、福祉活動などなど。
また、目に見えない力を日常の生活でいかに活用していくか
という怪しい講義などを行ってたなぁ。
雲を消したり、幽体離脱したり・・・
クリスマスの日には、檀家さんから、いらなくなったおもちゃを集め、
親の居ない児童施設に、サンタクロースになってプレゼントしたりとか。
この活動は、めっちゃ、楽しかった。

そこからどういう人生を歩まれたんですか?

実は学生起業家の時に全国の学生起業家のネットワークで
旅行雑誌「じゃらん」を生み出していたんだよ。
リクルートにプレゼンしてね。
「じゃらん」が東京でブレイクして、
俺がちょうど追い出された時に「じゃらん九州」を立ち上げる時だったので、
「じゃらん九州」を立ち上げるメンバーにと話があった。
「マインドシェア」というマーケティング会社があるんだけど、
その会社が「じゃらん」の制作を8割くらいしていたんだよ。
さっき話した全国の学生起業家のネットワークをつないだのが今井さんという人の
会社が「マインドシェア」なの。
その今井さんから話が来て、
「『じゃらん九州』を立ち上げようと思ったんだけど、
いったん、平野も東京に来い」
で、俺にとってその会社が初めての就職。
固定給をもらえる体験をしてみたんだけど、僕にとっては
結構大変だった。
何もしなくなる堕落な自分が出てくるようになった。
自分が自分でいられなくなるような感覚を味わい、
危機感を感じていたよ。
明日どうなるかわからない時こそ、
内からエネルギーが出てくるものでしょ。
「マインドシェア」の時代に「まちおこし」の仕事をやり始めた。
田舎の資源を都会で売っていた頃は、
日本の銀行が破たんした年だった。
日本の力はどんどん弱まってきていたわけ。
でも、海外の人がほしがる日本の商品やサービスがあると、
日本は元気になってくるよね。
日本が元気になることで、
海外を元気にすることができるんじゃないかと。
そこで、外貨を稼げる商品を作ろうと思い、
「日本発、世界初」のプロジェクトが立ち上がった。
そして、日韓ワールドカップに向けて会社を興したんだよ。

それでは、若い人たちに向けて、
「こういうことをやっておいたほうがいいよ」というものがありましたら、
アドバイスをお願いします。

好きなことをやっておいたほうがいいかな。
そして、人の話は聞くな!
情報があまりにも増えているから、
参考にするのはいいけど決めるのは自分。
夢を実現するには目標を明確にして、
その目標を達成するためにきちんと計画を立てることが
夢の近道だと言う人もいれば、
目標を決めずに今やりたいことを一生懸命やって、
目の前のことに常にどうしたら相手が
どう喜ぶかということだけを真剣に考えてやれば成功すると言う人もいる。
自分はどちらが合っているかだから。
実際に試してどちらが気持ちいいかを体感するしかない。
知識が豊富だけど、
頭でっかちになっている若者が多い感じがするな。
失敗を恐れずにチャレンジをすること。
やったことのないことって失敗して当然だから。
失敗は自分の体験になり、財産になるから、
若い人たちにはどんどん失敗しまくってほしい。
20代ならどうにでもいけるよ。
ぜひ、失敗してほしい!
うまくいこうと思わずに失敗しまくってほしいね。

~~~同行サポーターからの質問ターイム~~~
好きなことをどう見つけたらいいのでしょうか?

今まで自分が費やした時間と一番お金を使っているものに
好きなことのヒントが隠されている。
時間とお金はエネルギーだから。
時間を忘れるほど没頭したり、ワクワクしていることに
好きなことの要素が入っていると思うよ。

仕事は別に楽しいものじゃなくてもいいと思っていました。
仕事で儲けたお金で幸せや楽しさを感じればいいと。
楽しいことに没頭して、本気で遊んで利益を上げられれば、
僕も最高に幸せだと思います。
ただ、それは難しいと思うんですよ。
好きなことをやってお金を稼いでいる人は、
スポーツ選手やアーティストなどの少数の人だと思うんです。
好きなことを仕事にしようと行動するのか、
それとも好きなことは趣味として置いて、
別のことでお金を儲けて好きなことにお金を使うのか…。
正直、頭の中が混乱しています。

人生はその繰り返しだから。
体験しないとわからない。
「ハガレックス」という絵の具がはがれること自体、固定概念だよね。
「仕事を楽しむことはすごく難しい」というのも固定概念だし、
「その固定概念を変えることは難しい」と思うのも固定概念。
自分が本当に楽しいと思えることを追求したほうがいいよ。

では、その発想を止めます!

それでもいいと思うけど、
人生って思い通りになると思う?

いや、思い通りにはならないと思います。
僕も大学1年生の時に起業サークルで
合コンの会社をやろうという話があったんですよ
あの時、勇気や思い切りがなかったんだと。
やっぱり、そこでできないとダメなんでしょうか?

もしかしたら、
できなかったことがよかったのかもしれない。

思い込む力が必要だったんだと思います。
今日のお話を聞いて、
思い込めば人生は思い通りになるのかと思いました。

俺はコンパの斡旋をしたかったわけじゃなくて、
福岡の大学生が楽しく遊べる場を作りたかったんだよ。
コンパの斡旋だけだったら、
斡旋だけしてお金をもらえばよかったけど、
アンケートを付けてお店に指導をしているんだよ。
「もっとこうしたら学生は楽しくなるんだ。
学生の意見をどんどん聞いて、
店を学生が楽しめるように改善してほしい」
という思いが根っこにあるんだよ。
俺の中ではコンパはどうでもいいもの。
九州はおもしろいエリアで、
宮崎や大分の若い子は東京に行かずに福岡に来ちゃう。
全九州の学生の5割が福岡にいる。
だから、学生にとって遊びやすい街があるとどんどん集まってくる。
当時も福岡で学生は8万人しかいなかったからね。
まぁ、その市場でも十分食っていける需要はあったけどね。

ありがとうございます!
~~~同行サポーターからの質問タイム終了~~~
当時29歳の自分へ向けたメッセージを色紙にお願いできますでしょうか。

本日はありがとうございました!