75人目 大塚明恵さん:株式会社CAP

会社名:株式会社CAP
URL:http://ameblo.jp/salon-cap/
公開日:2010年12月22日


今回の旅は、株式会社CAPの大塚明恵さんです!

まずは自己ご紹介をお願いします。

今は本店のビューティーショップとトータルサロン、ネイル専門サロン、
そして、女性専用の美容室にカテゴリー分けして、
計4店舗を経営しています。
30歳までに自分のお店を持ちたい!
という夢を持っていました。
自分に何ができるかを考えた時に、
興味があって貪欲に研究していけるものは、
ビューティー系しかなかったんです。
働いていた時は育毛サロンでカウンセリングの勉強や接客をしていました。
その延長で活かせるものでエステをやりたいと思ったんです。
髪の毛を当たり前のように切るのと同じ感覚のエステサロンを作ろうと。
男の人にもエステを体験してもらえるお店です。
エステサロンだけを作ってしまうと、
専門のビューティーリーダーの方たちしか来ないので、
窓口を広くして誰でも来てもらえる美容院にしました。
男の人にも入りやすいように床屋さんと美容室をミックスした外観にして、
エステのできるお店を始めたんです。
それがスタートのきっかけです。

最初のお店選びは大変じゃなかったですか?

そうですね。
以前、勤めていたお客様の顧客リストも持っていないので、
ゼロスタート、どこで始めても同じだったんですよ。
駅から近いとか駅の雰囲気が自分に合うとかだけを考えて、
今日は中央線、明日は井の頭線に行こうと片っ端から攻めていましたね。
初めは1回1回電車に降りて次の駅に向かっていましたけど、
自転車のほうが早いかなと思うようになって、
家からどこまでも自転車に乗って不動産会社を探していました。
1日10~20件に行くんですけど、まず相手にされませんね。
「美容室をやりたいので良い物件ありませんか?」
100件以上行って、相手にされたのは4件くらい。
まともに話を聞いてくれるフリはするんですよ。
「君の夢のためにじっくり探してあげるね。連絡もするね」
と、まともな話をしてくれるのは4~5人しかいないんですね。
その中の1人が親身にしてくれたんですけど、
そこの物件がいいかなと思いながらも、
不安材料があったんです。
あまり人通りがよくなかったんですよ。
「15時頃の人の流れはどうなるんだろうか?
出勤時の朝は? 西日は入るのか?」
何回か集中的に調査しているうちに帰り道に迷ってしまったんです。
その時に電信柱に「自由が丘3丁目」と出ていたんですよ。
阿佐ヶ谷にいたはずなのに。
仕方ないので東横線の沿線を渋谷方向に向かって、
トボトボ帰っていったんです。
ちょうど学芸大学のお店の前に差しかかった辺りに
シャッターが半開きの店舗があって、
そこにおじ様が2人いたんですよ。
こんな夕方にシャッターが半開きってどういうことだろうって。
「ここは店舗が空くんですか?」って声をかけてみたら、
「何ですか、あなたは?」と。
「お店を探しているので、もしここが空くのであれば」
と言ったら、1人の方がオーナーさんだったんですよ。
もう1人は建築会社の方。
実は歯医者さんが夜逃げしちゃったらしく、
カルテも置いたままいなくなってしまっていたようで。
ここをどうしようか、という話をちょうどしていたらしいんです。
「私借りたいんですけど、条件はどんな感じですか?」
と言ったら、不動産会社を通してくださいと。
次の日、出直して不動産会社に行き、申し込みたいと言ったんですね。
オーナーさんはいい感じの人で、
どんなことをやるのかちゃんと話してくださいって。
お店を借りることができると信じちゃったんですよ。
でも蓋を開けたら、4人ぐらいすでに順番待ちだったんです。
洋服屋さんが2件と塾が申し込んでいました。
「塾は人目を隠れて勉強するから路面店にある必要はない。
洋服屋さんも強豪店がたくさんあるからやる必要がない。
美容室やエステはないから、
私が入った方がこのビルにとってもいい」
と、すごく生意気なプレゼンをしたんです。
でも、謙虚に「私は夢を持っている」とオーナーさんに伝えたら、
どういうわけか借りることができたんですよ。
ただ、そこに至るまでがものすごく大変でした。
お店は見つからないし、相手にされない。
いい物件だと思っても1000万円の保証金ですよとか。
29歳だと周りは充実したOL生活を送っているんですよ。
お稽古をしていたり、アフターファイブは充実していたり、
土日は飲み会があったり…。
私はおにぎりを1個持って自転車に乗って、
物件探しに明け暮れていましたね。
何だか切なかった。
公園でおにぎりを食べながら暗くなっていたんです。
それが29歳の頃です。

ある意味、無職ですよね。

完全に無職です。
焦りとお店をやりたいという波が交互にやってきました。
ダメかもって思いましたね。

29歳はどんな1年でしたか?

スタートしてお店を立ち上げたのが30歳と11か月。
29歳の頃はちょうど店舗が見つかるかという時なんですね。
ちょうどいろんな準備をしたり、店舗が見つからなくて悶々としていました。
人生で一番ダークな時期でしたね。
灰色の時代って自分で言っていましたもん。
仮の時代だとずっと思っていましたね。

振り返れば灰色の時代だと言えますけど、
当時は灰色どころか真っ暗闇ですよね。

「今は仮の人生だ」
と自分に言い聞かせて、
それが終わればちゃんとした人生になるから、
その時までがんばれと言っていたような気がします。

30歳の誕生日は何か覚えていらっしゃいますか?

30歳の誕生日までには目処がついてきたのかな。
31歳の誕生日をかみ締めていたので。
お店をオープンして1~2か月後ですからね。
自分の人生が始まる幕引きが31歳でしたから。
30歳は大変な時期だったと思いますね。

スタートにも立っていない。

そんな感じでしたね。
本来は30歳でスタートするはずでしたから。

ちなみに30歳までに目標設定されたきっかけは?

それは単純に区切りです。
男の人は脱サラして40歳や50歳でスタートしても
成功できるチャンスはあるけど、
女性は30歳までが勝負だよって、誰かに言われたんですよ。
それを真に受けて、30歳までにやるしかないと。

20代の頃に起業に向けてセミナーや勉強会などには?

全くゼロですね。
だから、おもしろいことがたくさん起きたんですけどね。
名刺も持たずに不動産物件を周って、
誰にも相手にしてもらえなかったり。
そんな当たり前のことを知りませんでしたね。
他には占いでその日がいいと聞いたので、
お盆のど真ん中にお店を開いたり。
世間的な常識がまったくなかったんです。
損益分岐点なんて言葉も後から知りましたし。
経営も知らない、数字も弱いのにお店を開いたので、
後々いろんなことで焦りましたね。

お店を始めるまでに資金を貯めていたんですか?

育毛サロンにいるときに店長にいきなり抜擢されたんですね。
行った先がまさかの不振店…。
都内のお店なのに地方のお店にも負けていて、
全国60店舗中、40~50位くらいの成績。
「何とかしてくれ」って言われたんです。
そう言われたらやるしかないなと思い、
最高で4位まで上げましたよ。
その時に学んだこともたくさんあり、
ある程度の資金を貯めていました。

お店がなかなか見つからず駄目かもとおっしゃっていましたが、
モチベーションを上げる手段はありました?

手段を考えていなかったんですけど、
友達にエステの練習モデルになってもらったり、
ご飯をご馳走してもらったりと。
協力してくれる人がいたので、
やらないわけにはいかない状態になっていました。
モチベーションを上げたというか、
上げざるを得なかったのかもしれませんね。

お店を始められてからの苦労は?

私はエステしかできなかったんですね。
男性に無料でエステを試していたんです。
知ってもらいたいという気持ちしかなかったので、
「最初はとりあえず無料でやってみてください。
もし気に入ったら、次回1000円でやってください」
でも、よく考えてみたら、
美容室に訪れるお客様たちにサービスするわけだから、
美容師さんたちの協力を得ないといけなかったんですね。
美容のできない人に指示されることは、
従業員さんにしてみたら難しいと思うんですね。
美容室の業界のこともわかりませんでした。
例えば、カットカラーがありますよね。
カラーリング5000円と書いたんですけど、
そうするとカラー代だけでいいやと思うんですね。
別途、シャンプーとブロー代がかかるんですよ。
シャンプーしないで、どうやって流すんだって。
当然、シャンプーも入っていると思っていたり。
業界の常識を知らなかったわけです。
美容師さんたちがどんな苦労をして、
カットデビューやスタイリストになる年月もわからなかったし、
別途、ウィッグ(練習用の人形)を買っていたりと、
美容室の世界がわからなかったので、
まずはそこを理解することから始めました。

本当に何も知らないところから始まったんですね。

お店のスタートが11時なんですけど、
住宅地のサロンなので予約の15分前に来ちゃう方もいらっしゃるんです。
ちょっとでも早くご案内してあげたいですよね。
だけど、「うちは11時からです」とスタイリストさんは言っちゃうんですね。
大きなサロンにいた人だと思うんですけど、
それが常識だったと思うんですけどね。
運営の方針の違いも出てくるんですよ。
スタイリストさんからすれば、
11時からお給料が発生していることを考えれば
その前から動けないことはわかるんですけどね。

経営者の考えとは違いますもんね。

気持ちを共有するのに最初は苦労しましたね。

社員さんから反乱って起きたりしましたか?

当時、美容師でもないのに美容室をやっているわけです。
「明日、美容師さんがいなかったらどうしよう!」
という不安はありましたね。
そうならなかったからよかったんですけど、
仕事が忙しすぎると辞めちゃうし、
逆に暇すぎても辞めてしまう。
そのバランスが難しいですね。

1店舗目が軌道に乗ったのはどのくらいからですか?

4ヶ月目くらいかな。
お盆真っ盛りの8月16日にオープンしたんです。
水曜日で忘れもしない。
「お盆の水曜日に誰がいるの?」って感じですけどね。
広告はポスティングのみです。
だけど、そのポスティングが一風変わっていて、
美容室なのに美容室っぽくないチラシで、
「シェービングエステが女性でもできます。
男性も無料でメンズエステができます」
と、当時はそういったサービスがなかったんですよね。
ポスティングしかやっていないのに、
お客様が初日から来て、最初の土日は予約が全部埋まったんですよ。
ものすごく嬉しくて、友達の美容師さんをいきなりヘルプで頼んじゃうんですよ。
そのくらい順調だったのに1か月経たないうちから閑古鳥に…。
オープン時のチラシ効果のみだったんです。
それから、毎日ポスティングを4か月くらいやりました。
スタッフの人たちも営業が終わってから、
手伝ってくれるようになって徐々にという感じです。

地味な作業をやられていたんですね。

小さいサロンは、みんなそうだと思いますよ。
有名エステとかカリスマは、
最初から華やかなイメージがあると思いますけど。
個人が小さいところからスタートするお店は
どこも同じような苦労があるとは思いますよ。

資金面で苦労はありませんでしたか?

エステをやっている友達から
使わなくなったスチーマーをもらったこともありましたよ。

周りに恵まれていたんですね。

エステのスチーマーって50万円くらいするんですよ。
それが展示会に行った時に
10万円ほどでアロマの香りも付くスチーマーがあったんです。
2台買ったほうがいいかと考えて、思い切って買いましたけど、
アロマのオイルをどんどん使っていって、
1か月しないうちに筒が割れてしまったことも。
知らないメーカーの安物買いは絶対にやめようっって決めましたね。
そんな痛い経験もしてきましたね。

現在、4店舗を経営しているじゃないですか。
拡大していこうと思ったのは、どんなタイミングで?

お客様の要望に応えていった感じなんですね。
あとはネイルもやりたいのは最初から目標だったんです。
ネイリストさんを募集した時に、今もいるスタッフが
1名入ってきてくれたんです。
だけど、美容室だからネイルの需要はないんですね。
お客様に勧めてもお付き合い程度で1日1人のお客様くらい。
サロンとして一番。と言い切るとほかの店舗のスタッフが
スネテしまいそうなので(笑)
サロンとして 他店舗を引っ張る立場に成長しました。
最初は売上も大変だったんですけど、
ネイルを拡大できました。
エステでも隣に男性がいない方がゆっくりできるという要望があったので、
女性専用のスパを作ったり、女性だけの美容を始めたり。
お客様の要望を解決していっただけで、
最初から店舗を増やしたいとは思っていませんでした。
今でも店舗を増やしたいとは思っていなくて、
できれば掘り下げていきたいんです。
例えば、美容室なのにこんなメニューがあったら同時に綺麗になれるとか、
新しいメニューをどんどん取り入れていきたいと思っています。
だから、店舗を広げようという気はないですね。

先にニーズがあって、
お客様の要望に応えているんですね。

「ゲルマニウムを入れてくれたら嬉しい」
と、何人にも言われて導入したのに、
ヒットしなかったこともありますよ。
そのまま言われた通りにやるのもよくないですね。

今後の目標はあるんですか?

お店の4店舗は近所に分散しているので、
スタッフも移動しなくちゃいけないし、
お客様も移動させなくちゃいけないんですね。
分散すると効率が悪いので、お店を合体させたいです。
そうなると立地やハコの問題もあるので、
思い通りにはいきません。
どうすればいいだろうってすごく考えています。

目標としては1店舗にまとめる?

コンセプトやテイストは違うようにしますが、
行ったり来たりをスムーズにできたほうが
スタッフ間もコミュニケーションが取りやすいし、
節約と効率化もできます。
その方向で集約したいですね。

会社として常に意識されている理念やポリシーはありますか?

常に必要とされたい。
美容室やサロンなんて正直どこにでもあるんですよね。
「スタッフの○○ちゃんじゃなきゃダメ、
あなたのお店じゃないとダメなのよ」
と言ってくださるお客様を増やしていきたいですね。

~~~同行サポーターからの質問ターイム~~~
名刺のピンク色がイメージなんでしょうか?

各店舗ごとに色を分けているんですよ。
ネイルをピンク、CAPはクリーム色。
色分けはしていますけど、
ピンクは私が個人的に好きな色なのですが
テーマカラー というほどではなく・・・・。

CAPの由来はありますか?

「Communication Area All People」
みんなが集まってコミュニケーションを取り合える、
そんな場所にしようという意味です。

学生のうちに何かやっておいたほうがいいことはありますか?

今やっていることがまさにそれです。
たまにセミナーや勉強会とかに参加していると、
セミナースタッフがボランティアの学生さんだったりするんですね。
ボランティアでも大人の世界を若い頃から裏方を見るのは、
すごく貴重だと思いますね。
私は学生の時に遊んでいただけでしたから。
若い方や学生さんが活動に参加されているのを見ると、
何て賢いんだろうって思いますね。

~~~同行サポーターからの質問タイム終了~~~
29歳がテーマなので、
20代のうちにやった方が今後のためにいいよというアドバイスはありますか?

絶対に実績だと思います。
実績が先だと思うんだけど、
お給料貯めようとする方が多いですよね。
お金にこだわる人がとても多いけど、まずは実績です!
「1年でこれだけの実績を作りました」
と、その実績を売っていくことをしていくこと。
タダで実績を作る時代が20代です。
「こんな事を20代のうちに実績としてやってきました」
「これを全国で1位にしました」
「お客様の○○率を○○%上げました」
「売上を300万円から1000万円にしました。それも3年連続です」
などとアピールしたら、面接官も実績を認めてくれるでしょう。
私の場合は
「全国60店舗中50位のお店を4位にした」
それも実績だと思いますね。
その実績をパッケージにして売ることもできたり、
誰かを説得するための材料にもなります。
その実績作りをしてから、
30歳でスタートしたほうがいいのに、
楽なものや稼げるものを探しているのは
非常にもったいないって思っちゃうんですよね。
20代のうちにやっておくことは実績作りかと。

お店をやるにしても実績が必要ですよね。
ある程度、無料で経験を積んでいって、
その中に問題点も出てくるようになる。

仮に何かを提案するとしても、
20代で実績を上げていた人だと見てもらえたら、
結果も違ってきますよ。
個人としても実績を作っていき、
お店単位としても実績を上げていくことが必要だと思いますね。

では、当時29歳のご自身へ向けたメッセージを色紙にお願いできますでしょうか。

本日はありがとうございました!