91人目 四ッ柳茂樹さん:株式会社OCL

会社名:株式会社OCL
URL:http://www.ocl.co.jp/
公開日:2011年08月24日


今回の旅は、株式会社OCLの四ッ柳茂樹さんです!

まずは読者向けに自己紹介をお願いします。

会社や事業を興す人の支援が主な事業です。
自分なりの好きなことをやり続けていたい人や
喫茶店のオーナーさんのような人も含めて、
小さな起業を応援することが多いです。
具体的にはコンサルティングとセミナーを行っています。

いつ頃からこの仕事に取り組むようになったんですか?

起業したのはまさにインタビューテーマの「29歳」です。
仕事としてちゃんとやりだしたのは3年目からです。
31歳の頃になります。

それまではどんな事業を?

僕はもともとNTTにいたんです。
最初は学校関係の教育システムの
提案をやりたいと思っていたんですね。
でも、会社を辞めて2か月ほど経ってから、
それは難しいということがわかったんです。
そして、ひょんなきっかけから起業支援をする団体の一員になったんです。
起業支援が楽しくて、みんな喜んでくれているので、
「じゃあ、こっちかな」と思い、仕事にし始めたわけです。

起業支援をするようになったきっかけを教えてください。

僕は大学の専攻もコンピュータなんです。
会社でもお客さんと接しない研究所でコンピュータばかり触れていました。
なのに、将来は学校を創りたい、大学の教育システムを創りたい。
という夢があったんですよ。
でも、それはあまりにも世間を知らないなと気がつき、
50歳になったら、経営者になるかもしれないので、
何か勉強をしなくてはと考え始めたんです。
大学時代にこれといった活動をまったくせずに就職したし、
何を勉強していいのかわからず、
結局、資格しか思いつきませんでした。
「中小企業診断士」は経営の資格だ!と思っていたので。
本当は違うんですけど、その時は勘違いしていました。
その後、土日はITベンチャー企業の仕事を手伝っていました。
おかげでベンチャーの雰囲気もだんだんわかり、
中小企業診断士の勉強はずっと続けていました。
そして、会社を辞めた前後で中小企業診断士の資格試験に合格していたんですよ。
最初にやろうと思っていた大学の教育システムの支援がうまくいかず、
フラフラしていたので、中小企業診断士の集まりに参加したんですね。
中小企業診断士って定年退職した人が多いんです。
だから、会合に行くと平均年齢が高くて
その中にギリギリ20代の僕が居たので、とても珍しいんです。
「おまえ、何やっているんだ?」とよく言われていましたね。
その縁でいろいろ声をかけていただくようになりました。
飲み会でみんなのお酌をするだけでしたが(笑)
そうこうしているうちにある日、
「四ッ柳さん、独立したばかりだし、
これから起業したい人に自分のことを話してよ」
って言われたんですよ。
それまで一度も人前で話すことをやっていなかったので、
ムリだと言って断っていたんですけど、
他にやる人がいないし、15分でいいと言われたので、
「じゃあ、やってみようか」と。
15分話すのと他の起業家の紹介を含めて、計2時間もらって話しました
そうしたら、僕の話を真剣に聞いてくれている女性がいたんですよ。
その人とすごく仲よくなり、
僕の知っていることを話したらすごく喜んでくれて、
起業する人と話すのは楽しいなと思ったんです。
それとは別に、起業支援の「ドリームゲート」にアドバイザーとして参加し始めました。
ドリームゲートのスタッフさんとご縁があって、
自分がアドバイザーをやるという意識はまったくなかったんですけど、
試しにやってみようと。
中小企業診断士ってカバー範囲の広い資格なんですけど、
何もできないといえば何もできないんですよ。
税務や法律で問題が起こったら困るのに
その知り合いが全然いなかった。
ドリームゲートに入ったら、税理士や弁護士、司法書士にいっぱい知り合えると思って、
それが目的で参加したんですよ。
実は、士業の人って自分より年齢が上だというイメージだったんですけど、
同年代や同い年の人がいっぱいいましたね。
ドリームゲートのアドバイザーとして相談を受けていたら
半年後くらいになるとものすごく相談が増え始めたんですよ。

増え始めた理由は何かあったんですか?

相談の受け方がよかったのかな。
基本的に僕は専門家ではなく起業家だと思っていたので、
自分がちょっと間違ったことを言っても
相手にわかりやすいほうがいいなと思っていたんです。
仮に間違っていたら自分で責任を取ればいいって。
例えば、たいていの士業の人は間違ったことを言ったら、
何かリスクを負うかもしれないと思って、
かっちりしたことを答えるんですよ。
専門用語で答えちゃうわけです。
その答えがわかりやすいわけがない。
そういう意味で僕の答えが一番わかりやすかったみたいですね。
今日のインタビューは話す立場ですけど、
相談の時は相手の話をほとんど聞いています。

人の話を聞くことが仕事とも言えますね。

会員さんも話しているほうが気持ちいいみたいです。
ドリームゲートはメールでの相談が多いんですよ。
途中からメールでの相談の回答方法もこだわるようになりました。
相談者の年齢を知ることができたので、
年齢によって答え方や表現を変えて、
相手の使っている言葉をこちらも使っています。
例えば、ホームページ系の相談が来た時に
ホームページならホームページ、ウェブならウェブって
そのまま使うようにしています。
僕はそれが当たり前だと思っていたけど、
同じことをやっていた人はあまりいなかったようです。
回答の速度も早いようなんですよね。
「そんなにいっぱい相談を受けていたら、1日終わっちゃうでしょう」
って、よく言われていましたけど、
大体1時間くらいで終わっていましたね。
理系だからかもしれないけど、パターン化させるのが得意なんです。
相談をパーッと見たら、これはこっち側だと分類して、
これとこれを抑えて返せば、絶対OK。
一回読めば大体わかるので、あとはバーッと書くだけです。
きっと、たくさん相談が来た時に分類するのが得意なんでしょうね。

29歳は資格を取得して、
いろんな方々に出会って勉強させてもらった時期だったんですね。

僕は9月が誕生日なんですけど、
9月末に会社を辞めて、11月末に会社を立ち上げて、中小企業診断士を取ったのが3月。
人前で話をし始めたのが7月なのですべて29歳の出来事ですね。

ご自身で29歳を振り返ってみるとどんな年でしたか?

振り返ってみるといい年でした。
今まで何かやろうとしてもレールの通りにしか生きていなかった。
「どこかでレールを外れたい」
と口だけで言っていましたけど、実際に行動はできなかったんです。
幸いに会社を辞めるという選択はできました。
その選択はよかったですね。

安定した職場と収入があったら辞めづらいと思います。
大半の人ってそういう状況で辞めたいけど辞められない。
「きっかけを作るためにはこうしたらいいよ」
「こう考え方をしたらいいよ」
など、アドバイスがあれば教えてもらいたいのですが。

一番思うのは外の世界の人と接しないと辞めるきっかけはもらえないでしょうね。
会社の中だけにいるとそこが当たり前の世界なので、
外の世界を知らないから怖くて辞められないんじゃないかな。
僕がいたのはNTTという会社だったので、周りはほぼ辞めないんですよ。
独立の話をしたら、拍子抜けされて「あっ、そう」って言われましたね。
ITのベンチャーを手伝わせてもらった時に、
みんな楽しそうに仕事をやっていましたね。
僕がNTTにいた頃からするといい加減な仕事のやり方に見えるんですけど。
それなのに、ものすごい仕事をやっている。
そんな世界を初めて見たので、びっくりしていたんですね。
もう一つは勘違いしないと難しいかもしれない。
俺はうまくいくんだ!って。

根拠のない自信ですね。

NTT時代、教育のプロジェクトを実質中心となって立ち上げて、
全社的なプロジェクトになろうとしていたんです。
ただ、あまりにも上司を無視してやっていたものだから、
足を引っ張られて、そのプロジェクトに入ることができませんでした。
他にはITベンチャーを手伝っていた時の友達が
インキュベーションの会社を立ち上げて遊びに来て、
「四ッ柳さんがやるなら協力するよ」と言われたんですね。
そして、僕より先にNTTを辞めて
ベンチャーを手伝っている元同期の仲間に話をしたら、
「そんなこと考えているなら、早く辞めたほうがいいんじゃない?」
ってあっさり言われたんですよ。
今考えてみたらそうでもないけど、
会社を辞めるタイミングが重なっているなって。
こうして、「自分にプラスになる勘違い」って必要なんじゃないかな。
そうじゃないと、新しい環境に飛び込めない。
転職活動をしたこともありましたけど、
それは思いとどまりました。
自分を安売りしそうだったので。

自分に自信をつけるにも他の人と会っていないと
その勘違いも生まれませんよね。

「社内の中で俺が一番できるぜ!」
と思って、会社を辞めちゃってもいいと思いますよ。
苦労は大きいでしょうけどね。
でも、勘違いをして自信を持つのは大切ですよ。

実際に大きな苦労した経験はあるんですか?

2回あります。
まずは起業した頃です。
NTTにいた頃は営業先に行ったらちゃんと話を聞いてくれるわけですよ。
大企業というブランドがありますから。
で、起業してから営業先に行くと、「おまえ、誰?」って。
そこで初めて、世間のことを知らなかったことに気づいたわけです。
自分は仕事ができるということと会社に信用があるというのは
まったく違うということすらわかっていませんでした。
半年くらい考えて、何かやればいいと思っていましたが、
今までやっていたことよりレベルの低いことから始めないといけないので、
当時は今よりもプライドが高かったので、
なかなか踏み出すことができませんでした。

プライドが高かった故に
「どうして周りは認めてくれないんだろう」
という気持ちの方が強かったんですね。

そうですね。
そして2回目の大きな苦労は起業支援とITの仕事を始めて、しばらく経った頃。
ずっと一人で仕事をしていましたけど、
人と一緒に仕事をしないと学校を創れないな。と思うようになり、
アルバイトや社員を雇うようになりました。
そこそこ順調そうに見えていたんですけど、
少し状況が悪くなった時に関係がバラバラになってしまったんです。
一番悪いのは僕です。
スタッフの話を聞いてあげていないし、気持ちをまったくわかっていない。
で、自分勝手にいろんなこと、好きなことをやっているわけです。
当然、すごい反発をくらいました。
僕はストレスを溜めこんでしまうタイプなので、喧嘩にはなりませんでしたが、
でも、ストレスで倒れてしまったんですよ。
昼ご飯に辛い物を食べた時にひどい立ちくらみをして、
意識を失った状態になり、倒れてしまいました。
体を打ったので、歩いていくのはダメなので、
その時、初めて救急車に乗りました。
救急車に乗って向かったのが会社から歩いて5分の病院(笑)
検査の結果は健康そのものでした。
病院で目が覚めた時は気持ちがすっきりしていました。
倒れてしまったので、みんな優しくしてくれましたけど、
それも1か月くらいしか続きませんでしたね。
そして、夏のビアガーデンでお酒を飲んでいた時に
暴言のつもりはまったくなかったんですけど、
何気ない会話で女性スタッフが泣いて帰ってしまうという事件が起きたんです。
その女性はしばらくしたら辞めてしまいました。
そんなこともあって、会社に行くのが嫌になってしまった。
その頃が2008年です。
ちょうど「ドリプラ(ドリームプラン・プレゼンテーション)2008」が始まっていて、
ドリームメンターという立場で応援をしていたので、
そちらに完全に逃避していましたね。
プレゼンターから頼られて、役に立っている感はあるし、
会社に行かない言い訳ができますから。

ドリプラでストレスを発散していたんですね。

2008年はそういう部分もありました。
でも、根本的な解決にはなっていないじゃないですか。
その間にも会社の人間関係はどんどん悪くなる一方。
で、徹夜で手伝った後にドリプラの予選を見ていたら、
隣にいた二人のドリプラの女性から
「ヨッツってさ。自分のことを全然見せないよね」
って、予選の間中ずっと言われ続けていて、そこで、
「あっ、そうか」
と気づいたんです。
実は自分のことを自己開示したことがあまりなかったんです。
プライベートで彼女がいる・いないなども話したことがない。
自分のことを話していなかったことに気がつき、
年明けくらいから個別に話をし始めました。
結局、最終的には全員辞めてもらうことなり、
また一人になったわけなんですが。
でも、売上は変わらなかったので、
今まで、いかに余計なことをやっていたのか。と思いましたね。

一人になると寂しさや切なくなる感情が湧くと思います。

それは仕方ないと思っていました。
人間関係的にずっとマイナスだったから、
僕にとっては話し合えたことはとてもよかった。
みんなと話したうえで辞めてもらうことになりましたから。

それが数年前の話なんですね。

2009年の1月から3月の間です。
今度は逆に人を雇いにくくなってしまいましたね。
いろいろと条件を考えてしまいますから。
一緒にやれる人とだけとやりたい。
その条件もまた変わってきていますが。
お互いに幸せになれるかどうかをすごく考えるようになりましたね。

今後の会社のビジョンはありますか?

起業支援にはいろんな役割の人が必要なんです。
得意な分野に精通している人と組んで行う起業支援の形態を
やりたいと思って動いています。
あとは行政がやっていたもの、ドリームゲートがまさにそうでしたけど、
それと同じようなものを創りたいと思っています。
地方自治体のインキュベーションのお手伝いや
レンタルオフィスの経営もするかもしれません。
そこを拠点として全国の起業家とつながるようなものを創りたいです。
会社でほしいのは、アイディアを考える部隊です。
ビジネスのアイディアを起業家と一緒に考えたり、
企業の新規事業のアイディアを考える部隊。
アイディアを考えられるのはすごく大事だと思っています。
大学生の集まりもいいですね。
会社が落ち込む前に大学のインターン生6人くらいいたことがあります。
僕自身楽しかったし、出てくるアイディアもおもしろかった。
その取り組みをおもしろいと思ってくれていた企業が
アイディアを考えてほしいという依頼が来て、
大学生の彼らにとっても楽しかったようです。

~~~同行サポーターからの質問ターイム~~~
(女性サポーター)
「レールを外れる」という言葉が私なりに印象に残りました。
私自身、レールに乗って生きてきたので、レールから外れるのは怖いと思っています。
いろんなものを失う可能性もありますし。
レールから外れたきっかけって外の世界への興味が大きかったんですか?

その興味が大きかったです。
ただ、外の世界への興味だけだとレールに外れられないと思います。
やっぱり、こっちの道もあるという勘違いしたほうがいけるかな。
いろんな人を見ていると、
レールから外れても案外大丈夫そうだなと思えてきますよ。

大学で就活をする時にベンチャーへ行こうとは思わなかったんですか?

ベンチャー企業自体、見たこともなかったです。
ITの企業だとNECや富士通、日立製作所とか。
それ以外の企業はほぼ知らなかった。
ベンチャーは就職するというイメージが全くありませんでした。
その時点でレールから外れていないんですよ。
今から考えると、がんばってレールに乗っていましたね。

肩書きや会社名が大事?
周囲の目もあったんですか?

大事でしたね。
最初の選択肢が周りの目で受ける所しか考えていませんでした。

もし選択肢が2つあったら何を基準に選びますか?
AとBというやりたいことがあって、
Aは将来性があるからやるとかお金を稼げそうだからやる。
Bはおもしろそうだからやる。といった場合に、、、

今の僕には夢が2つあります。
1つは日本で起業する人を倍にすることと、
昔から持っている学校を創るという夢。
学校の先生の地位を上げる学校を創りたい思いがあります。
それが目標に近いかどうかが基準になるかな。
他の人がどのような状態になるかが大事かもしれない。
日本で「教える」というのは与えるようなイメージがあるかもしれませんが、
共に育つと「共育」というイメージに近いと思っています。
あとは、やはり楽しい事ですね。

(男性サポーター)
起業するにあたって今経験しておかなければならないことって何でしょうか?

特にないですね。
何でもうまくいくので大丈夫です。

自分の好きにやっていけばいいんですか?

ある程度辛い経験をした人のほうがたぶん耐えられるでしょうね。
どこかで大変なことが必ずあるはずです。
それに耐えられたほうがいけるはずです。
いろんな人とたくさん知り合ったほうがいいですよ。
たくさんの人たちと会っている人はきっとうまくいくでしょうね。

「日本で起業する人を倍にする」とおっしゃっていましたが、
起業する人を倍にしたその先に見ている世界はどんなものなんですか?

起業するというと大変なイメージがありますよね。
でも、そうではなく、就職や転職と同じくらいの程度なんだよって、思ってもらいたい。
就職してもいいし、起業してもいい。という選択のできる社会になってほしい。
今だと会社を辞めたいと思ったら、まずは転職を考えますよね。
その選択の中に起業もあるようにしたい。
逆に起業していてもまた就職するという選択があってもいいわけです。
起業と就職、転職を同じレベルで考えられる日本社会が夢です。

~~~同行サポーターからの質問タイム終了~~~
四ッ柳社長が考える起業、起業家とは?

僕の考える「起業」の定義は、
責任を持って何か事業をしていることです。
会社員をやりながらやる副業も起業だと思っています。
「起業家」は責任を持って事業をしている人です。
起業がうまくいっている状態は何かというと、
自分のやりたいことを自分が満足できる収入を得て、
負担なくやり続けられている状態です。

起業を目指している若者たちに
20代のうちにやっておいたほうがいいことがありましたら、
一言アドバイスをお願いします。

レールを外れる所まではいかなくても
外れるかもしれない体験をいろいろすることかな。
今までの自分とは違う行動をたくさん繰り返してください。
そうすると、いろんな人と出会えて世界も広がるので
学生時代に培ってきた固定観念を崩せると思います。

では最後に当時29歳のご自身に向けたメッセージを色紙にお願いします。

「行動してから失敗する」
29歳の時は失敗がちょっと怖かったですね。
何もしないことが多かったから。

実際、インターネットが普及したせいか、
情報で解決する人が多くてなって、行動する人は少ない気がしますね。

振りですよね。
知った振り、行動した振り。
かくいう僕もそうなります。
色紙に書いたメッセージは29歳の自分に向けていますけど、
今の自分に対するメッセージでもいいかな。
もっとたくさん失敗しないとね。
何もしないほうが楽だから、行動しなくなってしまう。
浅井さんはインタビューをやっていてすごいと思いますよ。

いえいえ。インタビューという手段で、
ただ、ご縁あるみなさんと仲良くなりたいだけですから、
特にリスクもありませんし、失敗しようがありません(笑)
本日はありがとうございました!